特別な私の皇帝【野坂悠馬】 (ページ31)

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タツヤの夢ページ31

ヒロトが来る気配もなく、同点だ。

『…なんだあれ』

雷門の日和正勝…とキャプテン道成達巳がバレエみたいな動きしながらシュートを撃った。

「雷門は面白いことをするんだね」

意外にも威力は強い。止めにかかったタツヤをあっさりふっとばして、キーパー砂木沼治が止める隙も与えずゴール。

「僕もやってみたいな」

『あんなの絶対やりたくねぇ…』

野坂が結構ヤバイことばっかり言う…。壊れてきたか？

そこでタツヤが今ので怪我をしたことに気づく。

あれ、相当な技だ…。

タツヤはベンチに向かったが交代はせず無茶してる。

「基山タツヤ。今下がらなければ、深刻な故障を招く危険もありますね」

『故障、って…、サッカーができなくなんのか？』

「まだ粘るなら。
でも、退くようには見えないけどね。
ああまでして彼を動かすのはなんなのかな？」

そうだ。あんな頑張る必要ないだろ？

「あっ…、吉良ヒロト！」

西蔭が反対側の観客席を見て言った。

ヒロトが今来たなんてな。

そのとき今日の夢が頭に浮かぶ。

“ねぇ、いつかさ、フットボールフロンティア一緒に出てさ、そんで、日本一、目指そうよ！”

タツヤ…？

夢に出てきたのはタツヤとヒロトと…、私？

ヒロトを見た瞬間、パズルのピースがそろったように思い出した。

全部消してた記憶が蘇った。

ってことは、やっぱり私はお日さま園にいた。昔タツヤがフットボールフロンティアのことを聞いたのか。

タツヤ、夢が叶って良かったな…。ヒロトと私と一緒に出るはずだったかもしんねぇけど、私は別のチームで出てる。

一緒には無理だったが、フットボールフロンティアに出ることはできた。

頑張れよ…。

心の中だけで呟いた。