特別な私の皇帝【野坂悠馬】 (ページ23)

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嘘の理由　　存在価値ページ23

野坂side

僕はAちゃんにたくさん嘘をついているんだ…。

Aちゃんが好きじゃないとか、脳腫瘍が嘘とかじゃない。

本当は…、脳腫瘍のことを最初に言ったのは杏奈さんだ。

雷門と星章の試合後に僕が倒れて、たまたま出会ったのが、杏奈さんだった。雷門に行った時にも杏奈さんと会って。

そして、王帝月ノ宮に来た。彼女は僕のことを知りたがっていて、何故か脳腫瘍のことをはっきり言ってしまった。

杏奈さんとAちゃんに脳腫瘍だって言った時間差。そんなに大きな差じゃない。でも、Aちゃんなら少しの時間差でも気にする。

だから嘘をついたんだ…。

こんなに嘘をついてしまうのは。Aちゃんが好きだから。

竹見が死ぬほど会いたい人がいるって言ったときに、僕はAちゃんと杏奈さんの二人が浮かんで…。

今は杏奈さんのことを考えている。

いつでも真剣な表情で僕のことを気にする杏奈さんを。

「おかしいな…。
うっ…！」

急に激しい痛みが襲う。

「はぁ…、はぁ…、はぁ…」

急いで薬を口にした。

「まだだ…、ここで終わるなんて…、いけない…」

Aside

野坂が部屋に戻ってから、ひたすら言い続けてる。

『なんで野坂なんだよ…』

分かんねぇんだ…。野坂が一番世界を変えようとしてんのに脳腫瘍だってことが…。

『私の存在価値は、野坂がいるからある。野坂がいなきゃ、私がいる意味なんてねぇんだよ…』

野坂がいない世界なんて、私が生きれるはずがねぇ…。

『死んだりするなよ…？野坂』