特別な私の皇帝【野坂悠馬】 (ページ22)

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信じたくないページ22

寄宿舎で考えた。

『野坂は何で教えてくんねぇんだよ…。杏奈は何か知ってんのか…？』

ベッドにうつ伏せになって呟く。野坂で頭がいっぱいになってる。やっぱ好きなんだな…。

「Aちゃん、いるかな？」

野坂の声が聞こえる。

『いる』

短く返事して野坂が入ってきた。

「さっきはごめんね」

『…なんだよ。私に言えないなら来なくていい』

「僕のことについて、まだ言ってないことがあるけど、特に大事なことを言いたいんだ…」

神妙な言い方。

『分かった』

教えてくれるならいい。けど何だか。

「まだ誰にも言ってないんだ。
僕は、脳腫瘍と宣告された…」

『はっ…！？』

一瞬頭の中の動きが止まったかのように動けなくなった。

『脳腫瘍…？』

脳腫瘍自体はなんとなく知ってる。でも…、なんでだよ…？

「僕は時間がないんだ…。だから、はやく世界を変える…」

やっと意味が分かったよ…。野坂が星章戦であんな焦ってたのは脳腫瘍のせいだ。時間がなく、世界が変えられないかもだから…。

『で、でも、まだ大丈夫だろ？中２だし』

信じたくねぇよ…。

だから軽く言った。

「僕に残された時間はあと３ヶ月」

全然時間ねぇじゃんかよ…！

『なんで…、なんでだよ！？なんで野坂が脳腫瘍なんだよ！野坂は誰よりもこの世界のことを思ってんのに！野坂なら世界を変えられんのに…！あと少しで死ぬなんて、おかしいだろ…！？』

怒りと悲しみが混じって、視界がぼんやり歪む。

『野坂じゃなきゃ、世界は変えられねぇんだよ…』

涙が数滴落ちた。信じたくなくて、信じられなくて。

「Aちゃん、このことは気にしないで。僕はまだ大丈夫」

分かりやすい嘘で誤魔化して…、なんでそんなこと言えるんだよ…？

『そんな嘘通用しねぇよ…！』

野坂に悲しいのがばれたくなくて、仕方なくで抱きついた。

『野坂がいないなんて、ダメだ。まだ死ぬなよ…』

「Aちゃんのためにも、耐えきる。僕はAちゃんがいたから頑張れたんだ」

そのとき頬に野坂が唇をつけた。

『野坂～…！？』

「Aちゃんに悲しんでほしくないから」

ふざけた感じは一切ない、一種の優しさを感じた。

『もう、しょうがねぇな…！』

こうして付き合ってんのもあと少しだって思うと、どうしても許すのは野坂しかいない。