特別な私の皇帝【野坂悠馬】 (ページ18)

今日:20 hit、昨日:64 hit、合計:92,997 hit

信用ページ18

『監督さん、はやく出してほしいんだけど』

「ならチャンスをやる。点を取れれば、チームにいさせてやる。が、取れなかったら、出ていけ」

『はぁ…。で、どこ行けば？』

MFだった草加玄と交代。

『じゃ、交代させてもらうから』

FWに入れてもらえた。絶対点取ってやる！

「Aちゃんが入るなんてね」

『試合してみてぇんだよ。
そうだ。私が点取らねぇと追い出されるから』

「Aちゃんにパスを出していくよ。頑張って」

後半始まって時間はたったが、なかなかうまくいかない。

私はまだ一度もゴール前にたどり着けてねぇ…。

さらに、FWの葉音がシュートを撃ったが、キーパーの必殺技で止められた。

「何をしている！今のは得点できた」

「ディフェンスの勢いがすごくて…」

「言い訳は聞かない。求めるのは結果だ」

決められなかった葉音に野坂が苛立ったように言葉をぶつけた。

「何をそんなにイラついている？俺たちがまるで負けているような雰囲気じゃないか」

「丘野先輩は能天気ですね。
この結果は、王帝月ノ宮にとって負けているにも等しい状況。こんなことでは…」

野坂は苛立ちと同時に、焦りも感じている。

『どうしたんだよ、野坂？焦んなきゃいけねぇのは私なんだけど』

「僕はこんな結果を出していたらダメなんだ…」

野坂がおかしい…。何があったんだよ…？

試合再開。

野坂からボールを受け取った私は、まだ未熟なドリブルで懸命に星章に入る。

パスは野坂にしかできていないし、もらってない…。他のやつらを信用できねぇんだ…。私をチームに残そうとしてないんじゃねぇかって思うと、パスできない。

『あっ…』

何度行っても、取られる。どうすりゃいいんだよ…！

「宮谷！」

そのとき、ちょうどフリーだった私に丘野先輩がパスを出した。

「決めろ！お前ならできるだろう！」

初めて野坂以外からパスが来た…。

一瞬戸惑ったが、シュートを撃つ。

すると、シュートが光を出しながら不思議な動きをして、星章キーパー天野を破った。

『決めた…？』

「よくやった、宮谷！」

『な、なんだよ、丘野先輩…』

誰かに期待されたことも、喜んでもらえることもほぼなく生きてきた私が、今、期待され、喜んでもらった…。

「チッ…」

ベンチでは監督の嵐が舌打ちをしていた。