特別な私の皇帝【野坂悠馬】 (ページ15)

今日:3 hit、昨日:64 hit、合計:92,980 hit

必要ページ15

『野坂…、お前に聞きたいことがたくさんなんだ』

「いいよ。Aちゃんと一緒にいたいしね」

野坂は強く抱く。

『おい、部屋だからってあんまりやんな…！』

野坂以外にされたことなんて今まで一度もなかったから、野坂の部屋でも落ち着かない。

「大丈夫だよ」

『ったく…。
で、野坂は何で…、私なんか…、好きになったんだよ…』

前から心の片隅で感じていたことだろう。本当に何でだ？

「そうか…。覚えてないみたいだね。
Aちゃんは一度、少しだけど僕と同じ施設にいたんだよ」

『はぁ！？じゃあ何で私はアレスの天秤を受けてねぇの？』

野坂と同じ施設？野坂に会ったことなんてなかったはず。

「少しだったんだよ。１週間だけ。でも、僕はAちゃんと話した」

『知らねぇんだけど…？』

「やっぱり覚えてないみたいだね…。
Aちゃんはあのときから悲しそうだったんだ。僕と同じで」

悲しくなんてない。今だってそう。私を捨てたのか分からねぇけど、“家族”なんていらないんだよ…！

「施設にAちゃんが来たとき、Aちゃんも僕も一人だった。だけど、Aちゃんがきっかけで話すようになった」

『野坂は、覚えてんのか？』

「覚えてるよ。そのときかな？僕は寂しかった日々が変わった。
今思えばAちゃんが好きだったのかなって」

施設の頃の記憶なんてない。楽しくなんてなかったから、全部記憶に残ってない。

『…何で、１週間しかいなかったんだ？』

「１週間しかいなかったのは、別のところに移ったからなんだよ」

『どこ？』

「それは分からない。だけど、Aちゃんがいなくなった時、また僕は一人になったんだ」

『私は寂しくも、悲しくもないけど、一人だったんだよ。
でも今は、一人じゃねぇんだ…。野坂が、いる…』

まだ慣れないけど、野坂に手を回す。

「そうだね…。今は一人じゃない…。
続きを話すよ。王帝月ノ宮に来て、Aちゃんを見たんだ。僕はずっと探していて、Aちゃんなら一緒に世界を変えてくれるんじゃないかって思えたんだよ」

『私は覚えてなかった…。野坂が待っててくれたのに、ごめん…』

初めて私を必要としてくれた…。誰かが私を必要としてくれるなんて、思ってもいなかった。

『野坂がいなかったら、存在価値なんてなかったな…』