思考 ページ30
ユウくんがあんな顔しとるの、初めて見たんや。
「すまん、俺……しばらくAと距離を置きたいんや」
Aちゃんがおらん昼休みのミーティングの日、彼は硬い表情でそう言った。
今までの仲良さそうな様子を見とったみんなは、怪訝な顔をして
「は、はぁ！？ 急に何言うてるんや」
「なんかあったんならちゃんと説明しいや」
「理由もなかばってんそぎゃん事したら、あん子がかわいそうたい」
なんて具合に詰め寄ったけど、ユウくんは首を縦に振らんまま。ちょっとだけ険しいような顔で、考え込むように下を向いとる。いつもの明るくて元気な様子とは大違いや。
アイツどないしたんや、と肘でつついてきた蔵リンに聞かれても、アタシもなんにも言えへんかった。
ダブルス組んでから、こんなこと初めてやったから。
ユウくんの考えとる事がわからん。あの子のこと気にかけて上手くやっとるみたいやったのに、どうしていきなりそんなこと。それに、それをわざわざアタシたちに言う理由はなんやろうか。
「……理由はある。でも、」
ユウくんが困ったように歯切れ悪く言った。
それを見て、とっさに口を挟む。
「言えへんの？」
その問いかけに、彼が黙ったまま頷いた。
なにか事情があるなら、汲み取れるだけ汲み取ったりたい。そんな思いで、メガネのフレーム越しに黒い瞳を見つめた。
「じゃあ、これだけ聞かせてやユウくん。嫌いになったわけや無いんやな？」
そう問いかけると、さっきまでの様子が嘘のようにはっきりと彼が言いきった。
「おん。……俺には、これしか思いつかんだけや」
そう言ったユウくんは、いつになく真剣な顔をしていた。惚れ直しそう、なんて冗談も言えないくらいに。
首を傾げる皆を他所に、アタシはメガネを直しながら思う。
ああ、本気で恋をしとるんやな。あの子に。
そう気付いた。
手先が器用でよく気が回るユウくんでも、色恋沙汰になると不器用になるんやね。それが何だかちょっぴりおかしくて。
応援したらな。何か考えがあるなら、全力でフォローしたろ。それでこそのダブルスパートナーやろ？
Aちゃんとユウくん、上手くいくとええんやけど、なんて。アタシが思うまでもないことやとは思うけど、二人が幸せになることを願わずにはおれんかった。
「……拗れんかったらええんやけどな」
ぼそりとそう呟いたのは誰やったんやろうか。
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
