焦点 ページ27
「部活行くでA！」
「遅いから迎えに来てもうたわ」
放課後、ガラリと教室のドアが開いた。ラケットバッグを持った一氏さんと金色さんが方を組んでいる。相変わらず、二人は距離が近い。
箒を持ったままだった私は、慌ててロッカーにそれを押し込める。早く行かないと、今日は白石さんがミーティングをすると言っていたし。
「すみません、掃除が長引いて」
慌てて自分の机の上の鞄を取ると、金色さんは慌てすぎやで、と優しく笑った。これは、一氏さんが「愛想振りまくな！死なすど！」と言う流れ。
「コラ！小春、愛想振りまくなんて許さんで！」
「あーん、ユウくんが怒った！ ほなAちゃん、はよおいでな」
やっぱり。内股走りで逃げていく金色さんとそれを追う一氏さんを見て、教室の隅っこで笑いが起きた。最近、コントにも慣れて動じなくなってきた。
心の中でちょっと得意になりながら二人に追いつこうとすると、同級生の男子が二人私の前に立つ。
「へー、Aってあの先輩たちと仲良いんだな」
「案外お笑いとか好きなんや」
私、急いでいるのですが。話している場合では無いのですが。戸惑いながらも、無視は失礼なような気がして一応足を止める。
彼らはたしか野球部の人……だったような。
とりあえず、一氏さんたちに良くしてもらっていることにお笑いは関係ないのだけれど。なんと返事をするべきかわからない。
「え、あの、えっと」
「一発ギャグやってや」
「はぁ！？」
私がたじろいでいると、彼らはヘラヘラと笑いながら無茶振りを口にした。向こうの方でざわめきが起きた気がする。
なんでそうなるんですか。ここに転校する前はお笑いというものに縁が薄かった私にはあまりにも無茶だ。
よくわからない空気に汗が伝うのを感じていると、私の背後から声がする。
「いつまでボサッとしてんねん。行くで」
制服の襟が控えめに引っ張られた。
「一氏さん」
先に行ったと思ってた。あまり機嫌が良くなさそうな彼にまた引っ張られる。
従うように向こうをむくと、野球部くんたちの不満げな声が聞こえる。それを、一氏さんは露骨に呆れながらため息で一蹴した。
「お前ら、そういうのは相手選んで振らんとサムいで」
「は、はぁ」
その一言で二人は引き下がる。さすが一氏さん、笑いに厳しいなあ。ありがとうございます、と言ったものの返事は無かった。
背中を追いかけて小走りに廊下を進む。
この時彼が考えていたことを、今の私は知る由もなかった。
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
