転機 ページ3
その人は、転校してちょうど一週間後の昼休みにやってきた。
お弁当をつつきながら女の子たちに囲まれて好きな音楽やアイドルの話をしていた時、ガラリとドアが開いて。
「氷帝からの転校生ちゃんはおるかいな」
そこにいたのは、クリーム色の髪がキラキラ光る端正な顔立ちの人。先輩、だろうか。もしかしたら同学年かもしれない。何せクラスが多いからちっとも把握しきれない。考え込んで首を傾げていた時だった。
「白石先輩」
がたり、と後ろの席の男子生徒が立ち上がった。それを見たらしい『白石先輩』と呼ばれた人は、きゅっと目を細めてひらひら手を振る。なるほど、先輩で合っていたらしい。
……ところで。『 転校生ちゃん』ということは、もしかしなくても呼ばれたのは私だろう。
正面にいた子に、呼ばれてるよ、と耳打ちされる。それはわかるけど、一体なぜ？
周囲からの刺さるような視線に冷や汗をかきながら立ち上がると、ドアからこちらを覗く彼は人懐っこそうな顔で口を開いた。
「君か。ちょっと、話できへんか」
「……はい」
「なんや白石先輩、珍しくナンパですか」
「ちゃうって！聞いておきたい話があるんやって、テニス部の部長としてな」
「テニス部……」
そうか、それで私に声がかかったのか。すとんと腑に落ちた。氷帝学園の名前は全国的に有名だから、きっと変に期待をされているんだろう。申し訳ないけれど、私にはそんなにすごい技量も氷帝レギュラー陣を直接支えられるような知識も無かった。
納得しつつ机の間を通り抜け、目の前まで近付いた白石先輩を見上げる。
「私、レギュラー陣のマネージャーはしていませんでしたよ。だからご期待に添うようなことは」
そこまで言った瞬間、私の言葉を遮るように笑って彼は首を振った。
「いやいや、氷帝とかどうでもええんや」
「……え？」
その言葉に、思わず目を瞬かせる。
「うちは元々廃部の危機に立つくらい人数が少なくてな。ほんで今はマネージャーがおらんくて困ってるんや」
「は、ぁ」
「どうせなら経験者が欲しいと思っとったとこに君の話を聞いてな」
そうか。両手を合わせる白石先輩を見つめながらぼんやり考える。
この人には関係ないのだ。当たり前だ、違う学校のことなのだから。蓋を開けてみれば、たったそれだけの事。
彼の言葉は、まだ氷帝にしがみつこうとしていた私を少しだけ引き剥がしてくれたような気がした。
ゴクリと唾を飲む。
「そういうことなら私にやらせてください、白石先輩」
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
