開花 ページ20
「ありがとうございます」
「ん？」
その声に視線を合わせる。俺より身長の低いAが、立ち止まってこっちを少し見上げていた。電灯の光が、濃い影を彼女の頬に落とす。どこかで車のタイヤの音がした。
「今日のことも、この間のことも」
囁くような声が耳に入った。それを聞いて思う。律儀なだけやなくて、真っ直ぐなやつなんやな。
俺がやりたいようにやっただけやから、別に気にせんでいいのに。とはいえ、そう言われて悪い気はせん。
真剣に彼女の瞳を見つめながら返事をする。
「ああ。最初はどうなる事かと思っとったけどな。一安心や」
最近、Aが楽しそうにしてるのは知っとる。前の暗い表情とは違う。
さっきもそうや、こっちが毒気抜かれるくらい幸せそうにして。……ほんまに良かった、と思う。ちゃんと言えて、笑かせて。
思ってた通り、笑ってる方がずっとずっと魅力的や。
すると、俺の言葉を聞いたAが幸せそうにぱっと笑った。それはまるで、例えるなら花が咲いたみたいに華やかに、軽やかに。
一瞬肩が強ばる感覚があった。
「一氏さん、優しいんですね」
また一瞬、返事も忘れて見惚れた。見たことがないくらい明るくて、柔らかな表情。そんな顔もできたんや、と思う一方で、俺がこんなに綺麗な顔にさせたんか、とも感じる。
じわじわと名前をつけづらい感情が昇ってきて、脳が働かなくなるような。
「……お、おん」
軽口を叩こうにも、言葉が出てこん。
なんや、これ。緊張か。うるさい心臓と流れる血液、風邪ひいた時みたいに顔が熱い。
そんな俺の動揺を知らずに、彼女は夜道にローファーを踏み出した。俺もつられるように足を前に出す。
変な感覚やった。自分の体が自分やないみたいで。
「……直接言うと、なんだか照れます」
あー、そないな顔で笑うなや。
ふにゃりと目を細めたAの表情が瞼から離れなくなるのが怖くて、思わず目を逸らした。どんどん暗くなる道に、彼女の他に見るものなんて無い癖に。
まずい。明日、俺部活でどんな顔してこいつと話したらええんや。
虫の声も聞こえない夜道、落ち着かなくなってヘアバンドを直す。黙ったまま、それでも楽しそうに歩くAの顔にはまだ視線を移せなかった。
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
