表情 ページ15
「おー！ みんな早いやんか」
「よぉ、おはようさん皆」
「お、オサムちゃんが早いのは珍しいな」
誰より早く来ていた忍足さんが、邉辺先生を見て小さく笑った。彼は浪速のスピードスターというだけあって、いつも行動が手早い。彼から見たら誰も彼もが遅いのではないか？なんて思ったりするけど、それはともかく。
「何、ちょっとAに話があってな」
相変わらず煙草をふかしている邉辺先生が、特徴的な帽子の下からこちらを見て言った。多分、この間の話の続きだろう。
「はい！ 他校の試合テープのお話ですか」
「理解が早くて助かるわ。一こけしあげよか」
「そ、それは大丈夫です……」
私の返事を聞いた先生は、目を閉じて頷いてみせた。褒めてくれたのは嬉しいけれど、そもそも一こけしとは何なのだろう。何かの単位なのか、それとも本当にこけしが贈呈されるのか。ちょっぴり困って指を絡めていると、白石さんが三日月のように目を細めて口を開いた。
「ん、オサムちゃんがマネ困らしてる。PTAに訴えたるか」
「ちょっと待てや白石！ 」
けらけら笑う白石さんと、声を荒らげながらも口元は楽しそうな邉辺先生。それを見て、手を叩いて笑顔を見せる遠山くん。周りは止めるでもなくそれを見て思い思いの反応を見せている。そんなふうに、仲が良さそうにじゃれる姿がおかしくて。
「っ、あはは！」
ついつい口を抑えて笑うと、忍足さんや石田さんまでくすりと笑みをこぼしたのが見えた。白石さんは「んん……エクスタシー」と呟いている。エクスタシーとは何なのだろう。
邉辺先生がタバコの灰を落として私に向き直った。
「ええ顔で笑ってるやん」
「そうですか？」
「おん。十こけしくらいあげたろか」
と、目の前に居るはずの邉辺先生の声が何故か背後から響く。気付けば後ろに人の気配があった。
「！」
振り向くと、そこにはヘアバンドに手をかけてしたり顔のモノマネ王子。ニコニコ笑顔の小春さんも一緒だ。
「なーんてな。どや、驚いたかA」
「……ふふ。驚きました、一氏さん」
私、ここで沢山笑えるようになった気がする。それは皆のお陰で、一氏さんのおかげだ。……思い出すと照れくさくなってしまうけど。でも、ここに来てよかった、と心から思える。
「ん、ホンマにええ顔や」
褒めてもらえたのが嬉しくて私が心のままに笑うと、一氏さんも屈託のない笑顔を返してくれた。
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
