友愛 ページ13
「ここは氷帝のコートやない。俺ら、四天宝寺のテニスコートや。な？」
ゆっくりとした言葉が耳に届く。遠くでチャイムが鳴っていた。
「うちにはお前の事傷付けるやつなんかおらん。多少怖いやつや、馴染まれへんやつはおるかもしれんけど……」
そこまで言って、一氏さんがちらりと向こうへ……多少わざとらしく視線をやった。
「……なんでこっちを見るんや」
「うんうん、師範はええからアタシと練習してましょね」
眉を顰める石田さん、そして彼の腕を取る小春さん。
「コラ小春浮気かぁ！……んん」
さらに、そんな小春さんに吠えるように声を上げる一氏さん。それを見て遠山くんはケラケラ笑っているし、財前くんはあからさまなため息をついている。遠くからこちらを見ている千歳さん、腕を組んでこちらを見ている忍足さんと白石さん。向こうにいる先輩は、そういえば名前を聞いていないような。
それはともかく。……見渡せば、いつの間にかとっても注目されている。
目の前の出来事に目を白黒させていると、一氏さんが小さく咳払いした。
「ちゃんと言ったり、ユウジ」
「わーっとるわ。……A」
「は、い」
顔が近い。汗の匂い、男の人の匂い。どうしても違和感を持ってしまう心臓を他所に、真剣な顔の一氏さんは目を合わせてくれる。その目はやんわりと細められていた。決して怖い表情ではない。すぅっと、彼が息を吸う。
「ええか？ お前はここに居てええんや」
「っ、」
「Aはもう、四天宝寺の仲間やから」
思わず目を見開く。そんな私を、一氏さんはしっかりと私の頬に手を当てたまま見ていた。彼の言葉を皮切りに、皆がこちらへと足を向けた気配がする。
「そうや。安心しとってええんやで」
「おう！ ワイらは氷帝になんか負けへんで」
「金ちゃん、今はそういう話やなくて……まぁええか」
いつの間にか隣にいた白石さんが私の肩を軽く叩く。
「俺が無理言ってマネに来てもらったかて、えらかったら女テニに移ってもええし」
そう言って、柔らかい表情で笑ってみせる。
目に映る、耳に入る、体に触れるもののどれもが、怖いくらいに優しくて。目の奥がぎゅっと熱くなる。こんな感覚知らない。嬉しくて、胸の奥が高鳴って。
「ありがとうございます」
自分の口からつっかえずに出てきたその言葉は、多分ずっと誰かに言いたかったセリフだった。
目の前一氏さんが小さく笑って頷いた。その表情は、なんだかすごく格好よくて、泣けてしまうくらいだった。
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純春(プロフ) - ユウジがカッコよくてもう、本当尊かったです！！四天王寺の皆も優しくて！今までの読んできた小説の中で一番好きでした！素敵な小説をありがとうございました！！ (2022年8月12日 3時) (
レス) @page35 id: 09c558d372 (このIDを非表示/違反報告)
ユズキ - はじめまして。ユウジ夢探していたらこちらの作品に出会いました。ユウジ本当にかっこよくてきゅんきゅんしました……！ユウジ夢自体あまり世の中に多くない中、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せです！ありがとうございました！ (2021年8月30日 11時) (レス) id: 9fc0ea5f67 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - ユウジくんの作品を探してたら辿り着きました。とてもきゅんきゅんしました！ (2021年3月1日 4時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
におー - この作品を見てからか、四天宝寺の中でユウジが一番の推しになりました！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ee24a57219 (このIDを非表示/違反報告)
猫乃(プロフ) - 珠那さん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです。 気に入って頂けて何よりです、どうか完結までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫乃 | 作成日時：2020年5月9日 18時
