✩そして、出会う(前編)✩ ページ12
サイヤ人、という言葉に反応し、その人がこちらを向いた。
特徴的な髪型や戦闘服のような服装は確かにサイヤ人のものだった。しかし師範のように目付きが鋭いわけでも、
「あの、この方は……？」
選手じゃないのに、何故ここに？
そんな問いかけが聞こえてきそうだ。
「……はじめまして、空愛です」
こちらが名乗らないと、孫悟空に自分の娘だとか言われかねない。そんなのはごめんだから、自分から頭を下げた。反射で第六のサイヤ人も頭を下げる。
「え、あ……ボクはキャベです。
あの……失礼ですが、もしかして貴女もサイヤ人ですか…？」
「はい、一応。人間とのハーフですけどね」
そう言うと彼____キャベさんは目を輝かせた。
「混血…！あの、半分サイヤ人ということは、もしかして貴女も戦うんですか！？いやでも選手じゃないってことは戦わない？でも今回は出ないだけという可能性も…」
いきなりのことで驚く私と孫悟空、そして師範。
その視線に気づいたのか、キャベさんはハッとし、次の瞬間には慌てだした。
「あっごめんなさい、ボク一人ではしゃいで…！
同年代のサイヤ人と話すことなんて中々ないからつい……」
……？
「同、年代……？」
「え、そ、そうじゃないんですか……？」
「た、多分同年代ですね…」
こういう時サイヤ人って面倒だ。実年齢より大分若く見えるのは決して利点だけでは無いから…
でも少し気がかりなのは変わらなかった。
キャベさんは今、"同年代のサイヤ人と話すことなんて中々ない"と言った。
普通に考えて、それはおかしいのではないか？私のように一人でフラフラ旅に出てるならまだしも、彼は見た感じだとしっかり働いているのだろうし、同期くらい居てもいいはずだ。というかいるはずだ。
だが…
それを聞くのは野暮というものだろう。
「…にしても其方のサイヤ人はちゃんと働いているんですね。うちの純血サイヤ人とは大違い…なんて」
ちら、と隣にいる二人の純血サイヤ人を見ながら言う。
師範は少し気まずそうに目を逸らしたが、孫悟空は目を逸らす所か心做しか嬉しそうな顔で見つめ返してきた。
…やっぱりこういう感情は言葉にしない限り孫悟空には伝わらないのかもしれない。
「…ホント、大違い」
ボソッと呟いたところで、キャベさんに声をかけられた。
「あの、空愛さん……
大丈夫ですか？」
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作者名：一華(Web) | 作成日時：2023年5月24日 23時
