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練習、ダウン、片付け、全部終わらせて部室に戻った俺は真っ先に携帯を開いた。アドレスの欄にAのアドレスがあるって、それだけで充分すぎるくらい幸せで。夢でないことを確認するつもりだった。ただそれだけだったから、1件の新着メールがあることに気づいて息を詰まらせる。
アドレスは間違いなくAのものだった。急いで開くと、よろしくね。という件名が真っ先に目に入って頭を抱える。キモいことを自覚して言う、俺のためにメールを打つAを想像するとどうしようもなく可愛い。
送られてきた内容は軽い挨拶文。そして文末には『月曜日だけど、一緒に何処か行くってことで良かった、よね?』という文章が添えられていた。件名だけで頭を抱えていた俺は、戸惑った様子が容易に理解できる本文に心臓が締め付けられた。どうしようもなく愛おしく思えて仕方ない。
「何か光来くんが悶えてる。」
「気持ち悪ィ……。」
幸郎と芽生がそんな会話を交わして俺の携帯を覗き込んでいることにも気づかず、俺はぶつける宛てもない思いに煩悶していた。
「(人1)さんからのメール!良かったじゃん光来くん。」
「うおっ!?おいお前ら何勝手に覗いてるんだ!!」
「お前が気味悪く悶えてるからだろ。」
眉をひそめた芽生の言葉を受けて、俺が傍から見ても様子の変化がわかりやすい事に気づかされた。咳払いを一つして平然を装う俺の横で幸郎が「ほら返信は?」とからかうように笑った。
「うるせえ。」とぶっきら棒に返事をして携帯をしまう。こいつらに見られながら返信とかどんな地獄だ。Aには申し訳ないけれど少し待ってもらおう。俺が携帯をしまったことに「えー。」と幸郎が不満の声をこぼし、芽生も「つまんねーの。」と口を尖らせた。知ったことか。
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携帯が振動する。もしかして、とか考えながら携帯を開けば、1件の新着メールが届いていた。送信主は光来くんで、件名はよろしく。簡潔なその文字列がなんだか面白い。
「Aが良ければだけど、……。」
一文を音読して、何だか恥ずかしくなってきて顔を伏せた。そりゃあ勿論嫌ではない。一緒に帰った日だって、光来くんと話すのは楽しかった。もっと彼のことを知りたいと思うし、私には知る義務があると思う。でもやっぱり……男の人と2人で遊びに行くなんて初めてで。
今から緊張してしまって、震える指で「こちらこそ是非。」と送信した。
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赤兎リエ輔(プロフ) - 檸檬さん» レス遅れちゃってすみません…!初々しさを目指しているので、そう感じていただけているようでとても嬉しいです…!初々しさ全開で頑張ります笑 コメントありがとうございます、これからもよろしくお願い致します〜! (2020年3月30日 21時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - 初々しいの好きです!!!!!!!!!!!! (2020年3月20日 19時) (レス) id: bb7087dd1f (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - なつなつきさん» 謝らないでください〜コメントとってもありがたいです涙 私としてはにやけながら楽しんでいただけているようで嬉しい限りです…! これからもっとにやにやさせられるよう頑張りますので電車での閲覧ご注意くださいっ笑 (2020年3月17日 21時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - lonkuuさん» その甘酸っぱさを目指しているのでそのお言葉が嬉しいです…!!楽しんでいただけているようで何よりです…涙 お褒めの言葉、応援の言葉ありがとうございます。もっと好きになってもらえるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2020年3月17日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
なつなつき(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» またコメントすみません!電車で読むの間違えたぁぁっ。となってます。にやにやが止まりません! (2020年3月17日 11時) (レス) id: 0034c747bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2020年1月19日 1時