第２２３話 ページ23
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徳川さんは去っていくカミュさんの背中をじっと見つめていた。その何ともいえない雰囲気がなんとなく触れ辛くて、私は黙って地面を見つめ、彼が言葉を発するのを待っていた。
少ししてから軽く息を吐く音が聞こえて、そっと顔を上げる。徳川さんは私に視線を向けた。
「今のはフランス代表の主将だな？どういう関係だ？」
「どういうって……分からないです。ただカミュさんが私もラケットと愛し合っているとか、なんとかって……。」
そんなつもりはないのだろうけど徳川さんの口調は強くて、攻め立てられるような気持ちになる。上手く言葉で表すことのできないカミュさんとの関係にしどろもどろな私に徳川さんはまたひとつため息をついて、手で額を押さえた。
「何でお前はそうも……。」
独り言のようにつぶやかれた徳川さんの言葉の意味は分からなかったけれど、それを考えるより彼が不機嫌なことが苦しかった。自分が何か徳川さんを悩ませたり苛立たせているという事実が辛かった。
すみません、俯きながら返した言葉は自分の想像以上に掠れていた。数秒の後、ふっとまた息をつく音。でも今度のそれに対して嫌な心持はなかった。
「すまない、攻めるつもりはない…顔を上げてくれ。」
「……怒ってないですか？」
「ああ。」
決まりが悪いのか、徳川さんはくるりと私に背中を向けた。やるぞ、と呟いてテニスコートに向かっていく彼にはいと返事を返す。
徳川さんが怒っていると思って俯いたのは潤んだ瞳を見せたくなかったから。つまり、私は彼に嫌われたのではないかと思って泣いてしまいそうになったのだ。それくらいに私にとってのこの人は大きな存在らしい。
私のU-17の門出に全く同じときから一緒だった人、ともに挫折しともに這い上がった人、ずっと私を傍で支え続けてくれた人、私にとって誰より強い人。
私はこの人がいたからここまでこられたんだろうなって思うし、それは過言じゃないと思う。
ラケットを持ってコートに立つ大きな背中を目指してしまった。冷静に見えて実は必死なこの人を目指してしまったんだ。もっと強くなってこの人に認められたい、だから頑張らなくちゃいけない。けどそれ以上に結局はこの人とのテニスが大好きなんだ。
「何をしている、はやくコートに入れ。」
「はーい！」
今はそれだけ……それだけの、はず。
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紗菜 - アニメがまた、スタートするのでこちらも更新されるのをお待ちしています。 (2月15日 19時) (
レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - 続きが楽しみです (2021年9月22日 0時) (レス) id: 09253d858e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 素晴らしい作品！夢主ちゃん格好可愛いすぎます！ (2021年1月3日 15時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
巫和泉(プロフ) - コメント失礼します！読んでいて，とても面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年1月4日 18時) (レス) id: c314aa38cf (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 更新待ってます!続きが楽しみです。 (2019年11月7日 8時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤兎リエ輔
| 作者ホームページ：http://nekomoti
作成日時：2019年3月18日 0時
