第60話 ページ10
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「ところで今日は地獄行かんでええの?」
「……降りてくるんですよ、今日。速ければもう着くころじゃないですかね〜。」
会話の流れで出たその話題。Aからの言葉を受けて「さよか、そらおもろなりそうや。」と種ヶ島は笑う。
「ほな試合も始まるっちゅーことやな。」
「そうですね。何処のコートに挑戦するんでしょう。」
負け組みには練習場所が用意されていない。それもそのはず、この合宿を追い出された、いなくなったものとして扱われているのだから。練習場所を確保するためにはどこかのコートに試合を申し込んで勝つしかないのだ。
彼らの実力、自身、負けん気なら相当上の番号を求めるはず。そして勝ち組として残っていた選手達より上を欲するだろう。そうなってくると残るのは2つ。
「2番コートか、俺ら1番コートかってとこやな。」
「そうですね。……楽しみです。」
そういって目を細めたA。種ヶ島はその顔つきが今まで末っ子だった彼女とは違いすっかり先輩らしくなっていたことに目を見開いた後、「徳川たちにも知らせたろ。」と楽しそうに笑った。
歩いていくと、次第にラリーの音が聞こえ始めた。複数、それもかなり多くの数を同時に打っている音が聞こえることから、徳川がそこにいることは間違いないだろう。種子島と顔を見合わせ、朝早くから練習するそのストイックさに苦笑いした。
誰がラリーをしているのだろう、と疑問に思っていると、遠目からでも分かる赤い髪が目に入る。複数を同時に打てる技術とその髪色、相手は鬼で間違いないらしい。
Aと種ヶ島がスタンドまで移動する。2人は気づいているのかいないのか、全くこちらを意識する素振りを見せずにラリーを続けていた。
階段に腰掛けた種ヶ島が、そんな2人に声をかける。
「朝はよから精がでるなあ。……ところで、ちょっとおもろい試合が始まりそうやで。」
種ヶ島からの言葉に、鬼がラリーをやめた。種ヶ島からの言葉と、Aが地獄へ行かずその場にいること、それらを受けて導き出された答えは1つ。
「降りてきたんですね、奴らが。」
徳川の言葉に種ヶ島は楽しそうに笑ってみせた。
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年1月10日 0時