【テニプリ】 U‐１７の１番コートには女の子がいるみたいです。2 【U‐１７】 (ページ6)

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第５６話ページ6

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「やあ、お疲れ様。」

崖を降りた先にはいつも通り斉藤がいた。車に乗り込み、シートベルトをつけながらAは伝える。

「明日の朝、中学生達が山を降りるみたいです。だから今日で私の勤めもお仕舞い、明日から１番コートの練習に戻りますね。」
「そうか、明日……案外速かったね。」

Aからの報告をうけ、楽しそうに口角を上げている斉藤。Aも同じで、成長した彼らの本気の試合を見ることができるのかと期待に胸を躍らせている。また、それと同じくらい1番コートの練習に復帰できるのは喜ばしいことだった。

地獄でのことを斉藤と話しながら返った山道。いつもなら確実に酔っていたその道も、何故か今日は酔うことなくあっというまに過ぎ去っていた。

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「……あ。」

宿舎に戻ってすぐに出会った前方の人物にAは思わず言葉を漏らしてしまった。目の前の人物――種ヶ島もまた、偶然の遭遇に少し目を見開いて驚いている様子。けどそれも一瞬で、すぐにいつものように軽い笑みを浮かべる。

「こんばんはやな、Aちゃん。」
「……こんばんは。」

既にジャージを脱ぎさって私服姿の彼にはあの時ほどの恐怖はこみ上げてこず、言葉をまともに返すことも出来た。体への症状は鳥肌くらいで、今ならひとりでもなんとかなる気がする。

案外平気そうなAに、種ヶ島は驚きを隠さず見せた。それからフッと笑うと、少し距離を縮める。

「あん時はほんますまんかったなあ。でも嫌がらせちゃうんよ、Aちゃんのことおもっとるんは事実や。」

「せやけど人にはペースっちゅうもんがあるしな。」と苦笑いを浮かべつつも近づいてくる彼の言葉はAもよく分かっていた。弱いのは自分、彼はそれを治そうとしてくれただけなのだという事は理解している。

彼からの言葉とジャージを着ていない姿、それらがあいまってAの中の苦手意識が少しずつ薄れていくのを感じた。……今なら、大丈夫。それは自分への自己暗示。

「仲直りしようや、Aちゃん。」

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