【テニプリ】 U‐１７の１番コートには女の子がいるみたいです。2 【U‐１７】 (ページ37)

今日:8 hit、昨日:21 hit、合計:163,376 hit

第８７話ページ37

・
・

翌朝。目覚ましよりも早くおき、いつもより軽い体を起こしてベットからでる。ぐっと伸びをしてみれば心地よくて、全体的に気持ちのいい朝だった。

そう思えるのも全ては午後にある。徳川と買出しにいける、それは久しぶりに2人でゆっくり話せるということ。中学生がやってきて以降なかなかそんな時間が取れていなかった分喜びも大きかった。

買出しとはいえ憧れの人と2人で出かけられる、それだけで午前の練習をやりきる活力になった。

・

「なんやAちゃん、えらい気合入っとるなあ。」

サーキットをいつもより速いタイムで終え、タオルで汗を拭うAの頭上から声が降ってきた。顔を上げると練習にいなかった種ヶ島の姿があった。

「……修さん、練習は？」
「……ちゃーい☆」

独特に誤魔化してよっこらせとAの隣に腰を下ろした種ヶ島。これほどの至近距離でもやはり恐怖を感じず、克服というのもあながち非現実的なものではないのかもしれないと思う。

「なんかあるん？楽しみが顔に出とるで。」
「午後から徳川さんと買出しに行くんです。久しぶりに2人でゆっくりできるので、嬉しくて。」

嬉々とした笑みを浮かべるAの顔を見て、「さよか。」と種ヶ島は呟くように言う。何処か遠くを見つめるような目をした種ヶ島は続けて質問した。

「Aちゃんにとって徳川はどういう存在なん？奏多は、鬼は？」

その質問に少し考える素振りは見せたものの、Aは対して迷いも困った様子も浮かべることは無かった。うーん、とどう答えようか回答を搾り出す彼女の目はいつもと同じで純粋だ。

自分が予想していた答えが出そうにはないな、種ヶ島がそう悟るのとほぼ同時にAが言う。

「徳川さんは私の憧れで、越えたい人です。私が今こうしてここにいられているのもあの人が負けずに立ち向かっていたから……私もそうなりたいって思ったからですしね。

鬼さんと入江さんは……恩人、ですかね。言葉で表すことが出来ないほどの感謝と恩、私が健康体でテニスを続けられているのは2人のお陰です。」

目を細めてそう語ったAの声は力強かった。確かな意思をもった強い思い、Aの中の3人の存在がどれだけ大きいか嫌というほど伝わる。

その言葉を受けて、「さよか。」と呟くように言った種ヶ島がAの頭を雑に撫でた。そして驚きと困惑を見せる彼女を放っておいて、ゆらりとその場を後にしたのだった。