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第84話 ページ34





自主練をしにきたAと、ダブルスの練習をしていた3人が合流する。そして宍戸鳳ペア、跡部水瀬ペアの2ペアが誕生した。

まずは跡部とAという初めてのペアのためにラリーからはじめる。とはいっても、点数が入らないだけで試合と大差ない。お互い全力だ。




「行きますよ……一球入魂!!」



鳳から放たれたのは彼が得意とするスカッドサーブ……いや、ネオスカッドサーブだった。Aに飛んできたそれに反応するよりも先に、ボールはAの足元に落ちた。その事実に思わず目を見開く。

鳳のスカッドサーブの速さは知っていた。しかしいざコートにたってみると速いなんてものではない、ほとんど見えなかった。




「何してる。練習になんねえだろ、あーん?」
「……ごめん。ちょっとびっくりしちゃって。すごいね、超速いね!」




突然子供のようにはしゃぐAに鳳は少し面食らった様子だったが、褒められたことに素直に嬉しそうに笑った。「ありがとうございます。」と後頭部をかきながら表情筋を緩ませる鳳の肩を宍戸が軽く叩く。




「デレデレしてんなよ長太郎。……2度目はないと思うぜ。」




そういう宍戸は冷や汗をたらしながらにやりと笑っていた。Aの実力はシャッフルマッチで見たため鳳も知っているが、潜在的な部分までは分かっていない。脱落者としてAとともに練習をしていたからこそ、彼女の実力をよく知っているのだ。

用心しろ、そうともとれる宍戸からの忠告に鳳は頷くと、再びサーブを構えた。




「ヘマするんじゃねえぞ、サーブを返さねえとラリーは始まらねえんだからよ。」
「分かってますー!」




跡部に言葉を返したAも少し膝を曲げてグリップを握る。そして対角線上に居る鳳のことをじっと見つめた。




「一球入魂!!」




鳳から放たれるネオスカッドサーブ、1度目でいくらかはなれたその速さにほぼ反射的に反応し、ラケットで捉えた。パワーの無さを体のしなりで補い、それを返球する。

やるじゃねえの、と隣で呟いた跡部が宍戸からのボールを打ち返す。数回ラリーをした後、跡部がしかけた。




「ほうら、凍れ!」




跡部がその言葉を発したという事はインサイトで相手の死角を見極めたという事だろう。そしてその目は確かで、鳳の足元に鋭い一球を打ち込んだ。




「これがインサイトかあ……やっぱり入江さんに勝っただけあるねぇ……。」
「この俺様を品定めしてんじゃねえよ。」





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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti  
作成日時:2019年1月10日 0時

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