第74話 ページ24
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「ふぅ〜……やっぱりAちゃんのマッサージは最高だよね。」
「あぁ、疲れがふっとぶな。」
体を動かしてほぐされた箇所の感覚を確かめる入江と鬼。満足そうな2人をみてAも嬉しくなった。慕っており、恩のある2人の役に立てることがAにとってこの上ない喜びだった。
満足感を感じながら鬼のペットであるハムスターのかえでの元へ近づきゲージの入り口を開けると、かえでがかけてきて嬉しそうに手の上にのってきた。鷹もそうであったように、Aは驚くほど動物に好かれるのである。
「相変わらず動物に好かれるね、Aちゃんは。」
「かえでも嬉しそうだな。」
「私も嬉しいです……やっぱりいいですね〜ペット。」
緩んだ頬をそのままにかえでを撫でるAに、鬼と入江は顔を見合わせて笑う。その姿はさながら遊園地を楽しむ娘を見守る親である。
と、そんな現場にこの場に居たら兄になるであろう人物が増える。
「失礼します……A?」
「あ、お帰りなさい徳川さん!」
髪がぬれており、風呂上りであろう様子の徳川が部屋に戻ってきた。よお、と鬼。おかえり、と入江。より一層家族間の強まった室内に足を踏み入れ、持っている者を片付けつつ徳川が疑問を呈した。
「何故お前がここに?」
「鬼さんと入江さんのマッサージをしてました……あ、徳川さんもどうです?」
「試合の約束で受けますよ!」と無邪気な笑みを向けるA。風呂用品をしまい終わった徳川がマッサージか、と呟いて顎に手を考える素振りを見せる。
Aにとって徳川は尊敬の対象であるから、もちろんマッサージは構わないしむしろ日ごろの疲れを癒したいとすら思う。その考えが嬉々とした笑みに出ていたのか、徳川はふっと笑うとひとこと言った。
「好きなときに試合を受ける。」
「約束です。」
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翌日の朝。今日はシャッフルマッチがある日と言うだけあって朝からわくわくしているのを感じる。おかげで目覚めもいつもより良かった。
ただ不安でもあるというのが少し悔しくもある。越前のように、既に自分より実力がある中学生が数名いるかもしれない……そんな彼らとあたってもしも負けてしまったら。1番コートと言う地位を剥奪されることは何より怖かった。
思わずマイナスなことを考えてしまった思考を正すため、自分の頬をセルフでビンタする。勝つことだけ考えよう、そう思って準備を終えると部屋を出た。
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年1月10日 0時