第62話 ページ12
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「あれ?もう誰もコートに入らないんスか?ならこの勝負、俺達の勝ちっスね。」
コートにたった越前はそう言い放った。そんな彼の元に5つのボールが同時に飛んでくる。全てを打ち返した越前が打った人物のほうを見ると、そこには2番コートのコートリーダーである右端の姿があった。
その姿を確認した越前は「やっぱりね。」と小さく呟いた後、今度は大きな声で右端に言う。
「アンタがこの2番コートで1番強いんでしょ。俺とやろうよ。」
「右端!こいつらの鼻へし折ってやれ!2番コートのメンツを、」
「ここまで丸つぶれにして置いて、今更メンツでもないだろう。」
そういってコートに降りた右端がジャージのチャックを下げる。「はじめようか。」と静かに言った右端に、越前は楽しそうに笑って見せた。
「コートリーダーを引っ張り出したんか。毎度毎度黒ジャージ組には驚かされるわ。」
そう言った種ヶ島が「どっかの誰かさん達みたいにな。」と付け加えた。その誰かさん達、徳川とAは彼の言葉に反応することなく試合を見つめる。
圧倒的なセンス、実力、負けん気を持ち徳川が一目置いている。そして自分と同じく、徳川を倒すという目標を掲げている男……それがAにとっての越前リョーマだ。無意識ではあるがライバル視しているのはそのため。
「(徳川さんを倒せるほどの実力があるか……今、確認させて貰うよ。)」
もちろん、絶対に自分が先に倒すというのが前提条件の品定め。……とはいっても、既にAより実力をつけているであろう(試合をするまで認めはしないが)彼に品定めと言う言葉は可笑しいのかもしれないが。
右端のサーブから試合が始まる。右端はサーブを打った途端大きく左側に移動した。右ががら空き、それを見逃すほど越前は優しくはない。大きく右サイドに打ったボールを右端は返し、今度はさらに右サイドの幅を広げた。
彼の可笑しなプレースタイルに中学生達には困惑の表情が見られる。それでもやはり右を狙う意外に選択肢はなく、越前が右サイドのライン際にボールを打ち込んだ。
決まった、そう思われたが、右端はそれに反応する。中学生に驚きの表情がみられた。
「俺の右サイドは神の領域。何人たりとも抜かせはせん。」
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年1月10日 0時