第51話 ページ1
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あの後、徳川とともに鬼や入江の元へ訪れ話をした。チームシャッフルのことや中学生のことから、他愛のないことまで。そのうちに気分も晴れ、自分の中のその存在の大きさにA自身驚いている。夜更かしも良くないということで、Aの体調が優れるとみな就寝した。
朝、おかげさまですっきりとした気持ちで目覚めることが出来たAはぐーっと伸びをする。体を起こして支度をすると、斉藤に送ってもらいすぐさま地獄へ向かった。
「おはようございます、三船コーチ。」
朝の運動がてらに崖を登って訪れた場所に、すでに三船は起床しており、ひとり座っていた。Aの存在を確認し、その姿をじっと見つめた三船。普段は目も向けてくれない彼からの視線はなんだかくすぐったく感じた。
三船は少しAの様子を見てからふん、鼻で笑うといつも通り顔を背ける。
「ましになったか。」
「……はい、おかげさまで。」
決して顔を見せはしないけれど、自分を気遣ってくれたのは紛れもない事実。Aはありがたさで胸をいっぱいにしながら、指示されるより先に「皆さん起こしてきますね〜。」と洞窟へと向かった。
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中学生を起こした後、Aが三船の元へ戻ると、三船は彼女の姿を確認して立ち上がった。首をかしげるAに首だけ向け向けて三船は言う。
「お前もよーくしっとるあの丘に行く。高校生と中学生どもが揃ったら案内せい。」
「あの、丘に……分かりました。」
その場を去る三船の後姿を見つめつつ、昔を懐かしむ。とにかく中高生をまとう、とその場に腰を下ろした。
中高生が集まって、彼らの先頭に立ってその場所への案内をすること数十分。やっとその場所にたどり着いた。川辺にある急でごつごつした丘、ここが三船の言っていた場所だ。よく知っている、といわれたようにAにはなつかしの場所でもある。
地獄へ行ったとき、三船に足腰が弱いと言われこの丘を20秒以内に登れるようになれという課題をだされたのだ。登っては転げ落ち、落ちては怪我をし、それを繰り返していたあの日々が懐かしい。
「揃ったか、ガキ共。」
みなが急な丘に目を奪われている間に、三船は川の水面から出て足場となっている岩に立っていた。そして三船がこれからおこなう練習の指示を出す。
「今からお前らは合図とともにその岩の丘を駆け上がれ。」
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年1月10日 0時