12本のアネモネを君に

呼び出し3 ページ20

亮side



もうすぐ、海外撮影や舞台挨拶などで、家にも帰れない日々が続くことは、マネージャーからスケジュールを聞いてわかっていた。
もちろんそうなってしまえば、暫くAに会うこともできないと思った俺は、彼女を自宅へ呼びつけ、さすがに男の一人暮らしの家に入るのは躊躇うかと思ったが、Aはすんなりと俺の部屋へ足を踏み入れた。


夜も深くなってきた頃だが、Aが翌日休みなことも知っているし、荒れ放題な部屋を片付けて欲しいのも本音だ。
ご褒美といえば、素直に俺の荒れた部屋を片付け始めたA。そんな彼女のために、俺はウーバーイーツで好きそうな甘いものを、注文する。


俺が一切手を貸さなくても、Aはゴミを片付けて、手際よく散乱してある服を畳み、洗濯をして、その間に洗い物をする。
どんどん片付く部屋に感心しながら、俺はといえばゲーム片手にそんなAを観察中。
適当に放置していた台本を、一冊一冊、大事そうにラックにしまう横顔に、自然と頬が緩んだ。



暫くしてインターフォンがなって、ウーバーイーツから頼んでいたものを受け取ると、俺を探していたのか、玄関まできたAは、『吉沢くん、ある程度片付けたけど、あとどうしたらいい？』と聞いてくる。
一緒にリビングまで戻れば、さっきとは比べられないほどスッキリして、こんなにこの部屋広かったか？なんて思うほどだ。

俺を見上げるAに「じゃあ、これ食ってて」と、彼女のために頼んだチーズケーキを渡して、俺はそのまま風呂場へ向かった。


風呂場も掃除したのか、整理整頓され、綺麗になっていて、シャワーを浴びてリビングに戻れば、大人しく座ってチーズケーキを食べているA。
俺は冷蔵庫からビールを出して(ちなみに冷蔵庫の中もめちゃくちゃ綺麗になっていた)、Aに「飲む？」と聞くが、首を横に振るA。


『私お酒弱いからダメなの』

「へ〜全然飲めないの？」

『飲めるけど、酔うとめんどくさくなるから、友達が飲んだらダメって…』

「めんどくさくなるって、逆に気になるな」

『私も自分じゃ覚えてなくて…あ、吉沢くん、チーズケーキありがとう…すごく美味しい。いまチーズケーキも出前であるんだね？』

「甘いもんだろうがおかずだろうが、なんでも頼めるやつがあるんだよ」

『そうなんだ…すごい便利…』


そういうと、ニコニコ笑って残りを食べ始めたA。

なんか俺、ほんとにいつも餌付けしてんな…



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