12本のアネモネを君に

ご褒美4 ページ16

亮side



滅多に休日に出掛けることはないし、それこそ車を運転するのも、女の子と2人で出掛けるのもいつぶりだろうか…妙にソワソワした気持ちで、思ったよりも早くスーパーに着いたが、Aの姿はなく…
もしかしてすっぽかしたか？と思えば、通りの向こうからスーパーに走ってくるAの姿。

飾りっ気のない服にニット帽を被って、女らしいとは言えないけど、それでも乱れた髪をスーパーのガラス越しにパパッとなおす仕草に、自然と頬が緩んだ。


戸惑うAを連れてやって来たのは、ブランドショップが並ぶ街中。
昔から変わらず、俺とはちょっと距離を置いて後ろを付いてくるA…なんだか、ご主人様の後ろを付いて歩く忠犬のようで、少し笑えた。


そろそろ暖かくなって来たこともあり、春服を誰かに選んで欲しかった…というのは建前で、もうすぐAの24歳の誕生日だ。
彼女に何かプレゼントを贈りたい…と思い、さりげなく彼女に似合いそうな服を探し、「どう？」と聞くが、首を横に振るばかり。
ならば「好きなブランドは？」と聞けば、『ブランド知らないし、興味ない』と言われ、「じゃあ、今欲しい服は？」と聞けば、『前の給料日の時にフリーマーケットで買ったもん』と言うA。


完全に途方にくれて、一時休戦だ。
(一応俺は何着か、Aに選んでもらって買ったが…)

奥まった方にある喫茶店に入り、小腹を空かせたであろうAにパスタを頼んで食わせると、それまで嬉しそうな顔一つしなかった彼女は、途端に『美味しい』と言ってニコニコ笑う。


彼女は、何十万もするブランドバッグや服よりも、一皿800円のカルボナーラの方がお気に入りらしい。
欲のないやつだな…と思いつつも、彼女のこういうところが好きで、リスのように頬を膨らませて食べるAが、無性に可愛く見えて仕方なかった。


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