66話、人質 ページ17
森は一瞬、蘭堂の全身を見てからもう一度彼を見据えた。森の呼び掛けに、蘭堂は顔を上げる。
「いつもより寒そうだけど、大丈夫?」
「恥を承知で申し上げると、凍えて死にそうです」
蘭堂の言葉に、中原は訝しげな目を向ける。森に「下がって良いよ」と言われると、蘭堂は異能力を収め、頭を下げて出て行った。
「この時期に寒いわけねぇだろ。ビビってるだけじゃねぇのか?」
「アレでも、ポートマフィアの準幹部にして、優秀な異能力者なんだよ」
「どうでも良い。興味ねぇ」
蘭堂の異能力による拘束が解かれ、手首をさすりながら中原は言う。「そろそろ本題に入ったら?」という太宰の言葉に、森は思い出したように頷いた。
「中也くん、我々ポートマフィアの傘下に入る気はないかね?」
「…あ"ぁ?」
森の言葉は、中原にとって信じられないものであり、憤慨するべきものだった。中原の足元を除いて、周辺の床は歪み、抉れた。それを見た森の反応は至って冷静だった。中原の反応を予想していたからである。
「しかし、我々の目的はある程度一致している。お互いが提供できるものを確かめ合ってからでも、遅くはないと思うがね」
「…手前等がこの街にしたことを覚えてるか?」
「…先代の暴走か」
長きに渡り、この街を暴虐と恐怖に陥れた先代の存在は、誰の記憶にも新しい。そうして恐れられていた彼だが、最期は抵抗もできぬまま、森に殺された。終わりは呆気ないものである。
「あの暴政が復活したなどという噂が立っては、その真相を確かめねば、君達も不安じゃないかね?」
「…森さん?」
「アンタに関しても良くない噂が出回ってるぜ?先代は病死じゃなく、アンタに殺されたんじゃないかってな」
「そうだよ。先代は私が殺した」
もっと、隠したり誤魔化したりすると思っていた。さらりと答えた森に、中原は目を見開く。何してんの、と言いたげな太宰はため息をついた。先代をメスで切断し、病死の様に偽装したことを森は語った。スタンッと机に刺されたメスが、ぎらりと光る。
共同調査を申し入れたい、と森は言う。二人が調べている先代の噂と、中原が追っているアラハバキは同じものだと考えたからである。
「…もし、断ったら?」
森は薄い機械を取り出して、ボタンを押す。すると、少年の声が聞こえてきた。それは、ポートマフィアに捕まった羊の構成員だった。
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雪山(プロフ) - ラムネさん» ものすごい勢いのお褒めの言葉、ありがとございます!これからも頑張ります! (2022年11月22日 21時) (レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネ - もうこの作品大好き!!ああああああ!!もうなんなの!歳上なのに部下とか!好き!!そして男主の性格好み過ぎな?もうこの作品神!そしてこの作品生み出した雪山さんはもう神以上!更新頑張ってくださいいいいい! (2022年11月22日 19時) (レス) @page27 id: be178889d7 (このIDを非表示/違反報告)
雪山(プロフ) - Yasi123さん» なんて嬉しいお言葉…!これからも励んでいきます。 (2022年9月15日 20時) (レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
Yasi123(プロフ) - 最近見させていただいています。とても面白いくてめっちゃ好きです。男主くんのキャラがすごい好きです。頑張ってください (2022年9月14日 22時) (レス) id: ea7056b992 (このIDを非表示/違反報告)
雪山(プロフ) - elliscat810さん» 嬉しくて舞い上がってしまいました。コメントありがとうございます。 (2022年8月30日 14時) (レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪山 | 作成日時:2022年5月20日 17時