62話、七年前の某所 ページ13
＿＿ヨコハマ裏社会史上、最も死体が生産された八十八日。その名も“龍頭抗争”。この出来事を遡ること一年前。廃れた建物の一室で、男が二人、話していた。
「…ねぇ、どう思う？太宰くん」
「だから、お金がないとか、情報がないとか、部下からの信用がないとか、とっくに分かってたことでしょ？」
「酷いなぁ…」
カチャカチャとガラス棒でビーカーの中の液体をかき混ぜる太宰。その顔は呆れに染まっていた。森はつい最近、ポートマフィア首領の座を先代から受け継いだばかりである。しかし、ただの医者だった森が突然ポートマフィア首領に成り上がるという事実に、不審がる人間は少なくなかった。
「ところで、何故君は高血圧の薬と低血圧の薬を混ぜているんだい？」
「まとめて飲めば楽に死ねるかなーって」
さらりと口にした太宰に、森はため息をつく。彼に死なれては困るのだ。太宰は、森が先代から首領の座を譲られたと証明するための証言者である。ビーカーを傾け、中身を飲もうとした太宰だったが、森の言葉を聞き、それをやめた。
“「ボスは病により横死された。次期ボスを私に任ずると遺言を遺されて。君が証人だ。良いね？」”
壁にべっとりと付いた赤い血。病などとは笑わせる。先代を殺したのは森鴎外であった。血のような月を背に、太宰は静かに、森を見ていた。
…当てが外れたね。
俯いたまま、太宰は言う。自 殺未遂の患者を共犯者に選んだのは正解だった。この後太宰が動機不明の自 殺を遂げたとて、誰も森を疑わないからだ。しかし、こうして今も、太宰は生きている。不本意ながら、だが。
「外れてなんかいないさ。こうして、見事に作戦を成功させたじゃないか」
「…作戦っていうのは、暗殺に関わった人間の口を全て封じてから初めて完了って言うんだ」
太宰を見る森の目は、笑っていながらも鋭かった。そして彼は「君に似た人を知ってる」と言った。それに小さく反応した太宰だったが、森は話を進める。
「とにかく。口封じするつもりならとっくにやってるし、君がそんなに望むなら楽になれる薬を調合しても良い」
「…！本当？」
「その代わり、ちょっとした調査を頼みたい。なぁに、大した仕事じゃないし、危険もない。お付きもつけるしね」
「胡散臭い。……お付き？」
椅子をくるりと回し、机に向かい何かを書きながら話す森に、聞き返す太宰。
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雪山(プロフ) - ラムネさん» ものすごい勢いのお褒めの言葉、ありがとございます！これからも頑張ります！ (2022年11月22日 21時) (
レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネ - もうこの作品大好き！！ああああああ！！もうなんなの！歳上なのに部下とか！好き！！そして男主の性格好み過ぎな？もうこの作品神！そしてこの作品生み出した雪山さんはもう神以上！更新頑張ってくださいいいいい！ (2022年11月22日 19時) (レス) @page27 id: be178889d7 (このIDを非表示/違反報告)
雪山(プロフ) - Yasi123さん» なんて嬉しいお言葉…！これからも励んでいきます。 (2022年9月15日 20時) (レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
Yasi123(プロフ) - 最近見させていただいています。とても面白いくてめっちゃ好きです。男主くんのキャラがすごい好きです。頑張ってください (2022年9月14日 22時) (レス) id: ea7056b992 (このIDを非表示/違反報告)
雪山(プロフ) - elliscat810さん» 嬉しくて舞い上がってしまいました。コメントありがとうございます。 (2022年8月30日 14時) (レス) id: e986202370 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪山 | 作成日時：2022年5月20日 17時
