pm01:40 ページ42
そこには先程までと変わらない無表情、浅野はその人らしさのない、何も読み取れない顔を訝しげに見つめた。
『今は時間がありませんので、理事長に聞いてみては』
ここで浅野に対しての最善の答えがこれだった。一からシナリオを創作しても彼には通じなさそうだ、説得する時間もない、Aはそう答えを導き出すと、理事長に全任せすることを選んだ。
『そうだ、なぜこんな時間にここにいる』
今思い出したと言わんばかりに眉をひそめて僅かに首を傾げる浅野に、Aは無視を決め込んだ。
扉をノックして、返事があると確認して中に入った。
『なっ、おい待て……っ』
『３年Ｅ組のタウゼントです、理事長に急遽連絡があります』
薄暗い部屋の中、中央の革張りの椅子には浅野学秀の父でありこの学校の主である理事長が腰掛けている。
『そうか、急ぎの用事があるならここからすれば良いものを』
理事長はAの横にいるおそらく何も知らないであろう自身の息子、浅野学秀に悟られないよう、デスクに置かれているデスクトップパソコンのフレームをコツコツとたたいた。
『その方が早く合理的ではありますが……』
Aには決定的な欠点があった。
彼女の"中身"は人間のボディと接続している際には他の媒体に入ることが出来ないのだ。
それは研究者側の試行錯誤の上で成り立っていることであったから、そう簡単に彼女がどうこうできる話でもなかった。
だから球技大会の時も、本来は律と同様に誰かのスマホに入り込んで試合を見れば良いものを、自身のスマホを介して律に接続していた。
それに今回は、律に無理やり理事長のパソコンに接続してもらっても心象が悪いと読んでのことだった。
『無理なものは無理ですし、私達が職員室に連絡してもまともな答えは帰ってきませんよ、それも今回のことに関しては』
彼女は理事長の質問の真意に気づいていたが、わざと自身の機能の話から職員室に備え付けられている固定電話のことについて話をすり替えた。
それに気づくものはこの部屋に理事長とAしかいない。浅野は相変わらず訝しげな表情で2人のやり取りを静かに見ている。
それにＥ組が、体罰の酷い教員がやってきたと話してもまともに取り合わずに無視されておしまいだ、理事長に直接話す必要がある。
『理事長の教育精神を信じて出向いてきました』
『……』
『E組の現状は知っているでしょう、それを踏まえた上で＿＿＿＿』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天泣tenkyu(プロフ) - 杏さん» わーありがとうございます！更新遅いので気長にまっていただけると助かります…現代風になるよう意識してたので伝わってよかったです笑 (2018年9月30日 17時) (
レス) id: 2cce15959b (このIDを非表示/違反報告)
杏 - すごく面白いです！たまにタウゼントちゃんが現代風になるので笑いますw応援してます！更新頑張ってください！ (2018年9月29日 23時) (レス) id: 0c46f8b8b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天泣tenkyu | 作成日時：2018年9月19日 20時
