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pm16:16 ページ4

『なら今度の定期試験、合計点数が高かった方が……』

『いえ、私はこの学校で定期試験を受ける予定はないので』

Aが神妙な面持ちでそう告げると、浅野は何故だと言わんばかりに眉をひそめる。

『私がここにいる事情に関わりますので』

『いっそう気になるな、じゃあ一体何で勝負するつもりだ』

この対象には誠実でありたい、そう思ったのはプログラムだったのだろうか。Aは秘密保持のための勝ち試合を仕掛けるつもりはなかった。

チェスをやったらどちらが勝つだろうかと演算してみても、相手は未知数な上に1回勝負なら学習機能も使えない。これほどまでに心躍る存在は今まででも2人と居ない。

『チェスでもなんでも、頭脳でも体力でも……。私はあなたと力比べがしたい』

常に冷ややかに見えるAの顔が恍惚に染まる。開かれた瞳にはマゼンタが強く宿り、浅野を貫いた。

ぞくりと背中が粟立つ感覚。浅野はAの冷静な仮面を取ってやったと思わずニヤけそうになる口許を抑える。

『光栄だなタウゼント。まずは互いに得意不得意、可能なこと不可能なことを知りたいところだが……』

そこまで言いかけると浅野はハッと顔を上げた。

『茶でも行くか』

『その返しは想像がつきませんでした』

闘争心、ライバル、敵。そのどの表現にしても相手に対する不快感は一切含まれない。そこにはただ知的好奇心と興味があるだけだ。

特に敵視する訳でもない浅野はAへの興味によって突き動かされていた。そしてそれは彼女も同様で。

『まあ愉しそうですし良いですよ、メアド教えますから空いてる日があれば伝えてください』

メアドと言っても、送られてくるのは彼女の携帯にではなく彼女自身の頭なのだが。Aは近くの机に備え付けられたメモ帳に連絡先を書く。

互いに連絡先を交換すると、本を抱えたAは踵を返す。少し歩いて振り向くと、彼女の背中を見送っていた浅野に微笑む。

『レディーをティータイムに誘う時はもっとスマートにしましょうね』


細められたマゼンタはどちらの瞳だったか……。

pm16:20→←pm16:15



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作者名:天泣tenkyu | 作成日時:2019年6月14日 22時

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