ERROR！ver.2【浅野学秀】【赤羽業】 (ページ12)

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am11:15-encounter- ページ12

先程まではしていなかったエスコートをしてAを連れ出すと、曲がり角を曲がったところで浅野はため息をついた。

『あしらう能力は俺の方が上だったな』

『あれは……いえ、助かりました』

すんなりとAが礼を言うと、浅野は片眉を上げた。何か言いたげに口を開こうとするが、思い直したように固く閉じた。

『そういえば、さっきから思っていたんだがなぜ同じ方向に歩いていたんだ？』

『恐らく貴方と同じ理由でですね』

『本屋か』『はい』

石畳の階段を囲む紫陽花のすぐ向こうに本屋が見える。ケラケラと笑うAに、不機嫌な顔を隠しもしない浅野は左手を差し出す。

『仕方がない、一緒に行こうか』

『何が仕方ないんですか』

エスコートの合図に、Aは笑いながら手をかりた。階段を登れば直ぐに本屋だ。しかしこの通りには雑貨店やら喫茶店も横並びになっているため、休日には若者もチラホラと歩いている。

その中に五英傑の一人である榊原が見知らぬ女子と歩いていても、何ら不思議はないのだ。
その顔を見た瞬間、走り抜ける焦燥感に浅野は誤作動を起こしたように動きを止める。

『……Ｅ組とはいえお前なら一緒にいるところを見られても構わないか……行くぞ、タウゼント』

『あ、え、はい。私ならいいだなんて照れてしまいますね』

『……』『そんな目で見ても知りませんよ』

Aは間に合わない感情の解析を中断し後回し用のファイルに保存すると、再び目的地へ向けて歩みを進める。

『やあ、浅野くんじゃないか』

榊原はこちらに気づき、見知らぬ女子を伴ってこちらへと来た。Aと浅野はいつものどこか冷たく見える顔でそちらに視線をやる。

『外で会うのは珍しいな』

『だね。そちらの女性は……この前のＥ組の？』

驚きと困惑が入り交じった顔でAを見つめると、隣に立つ浅野を伺うように見る。その顔で何かを察したのか、榊原は僅かに微笑んだ。

『しばらくぶりだね。今日はデートかい？』

五英傑に限らず本校舎の人間はＥ組をすぐに見下すものだと思っていたが、榊原はどちらかというと良識を持ち合わせているらしい。Aは榊原のファイルに【まとも】と記録しておいた。

『少し所用で、デートだなんて大層なものでは無いですよ』

Aも社交辞令用の笑顔を浮かべると、他校の生徒だろうか、少しよそよそしい連れ添いの女性を気遣い軽く礼をした。