初秋の風 ページ41
私の日常はめまぐるしかった。それこそ只の貴族令嬢だったならお茶をゆっくり飲んで今頃本でも読んでいただろうが、私の場合それが書類仕事に代わっているのだ。
使えるものは使え主義だし、男女関係なく王位継承権があるわが国では王女である私も普通に仕事をする。お兄様たちもこの年の頃には勉強に加え仕事を覚えていた。特にゼンお兄様と私は将来兄上の臣下になるからその準備でもある。
夏ごろに私が城下でお兄様といるところを見られてから城下におりるような機会も増えたし……。
そんなこんなで日々を過ごしていたら、もうすっかり風はひんやりと冷えたものに変わっていた。
政務官の居る大部屋の資料室。私はお兄様にお話があって、先程からずっと話し込んでいた。
兄上とお兄様はそれぞれ地域ごとに管轄があって、私は北のお母様の仕事を手伝っていたこともあり閉鎖的な北部の政治的風通しを良くするためにいろいろと動いている。
「ああ座っているのを見ると、王女はまるで人形のようだな」
静粛な政務室にぽつりと投げ込まれた言葉。石は波紋を作りこの部屋に広まっていく。
人形、その言葉は美しいとか、そういう見目を褒める言葉として捉えることもできるけれど、貴族界では人形という褒め言葉は禁句である。中身がない”お飾り”という意味になるからだ。
聡明なものであるべき貴族に、その言葉は侮辱に近いという繊細な価値観からきている。
人によっては、というかもともと風通しの悪い北にいたということもあり、特に南の地域の貴族は私がウィラントで何をしていたか知らない。
そのせいで彼らは遊びでここに来ていると思っている節がある。
それに、こんな年端もいかない少女が自分達と同じ部屋で政務の"真似事"をしていることがきっと面白くないんだと思う。
先ほど言った通りゼンお兄様も私ほどの時には兄上様に付いて同じことをしていたわけで……。
まあ同じようなことを言われたこともあるんでしょうけど。
そして私がそんなことを言われて思うことはもちろん 兄上たちと何ら変わりない。
理不尽だとも思うし、まがりなりにでも貴族である彼らが私たち王族にそんな言葉を投げかけることはよろしくない。
気づかないお馬鹿な子供の振りをするなんてしたくなかった。
「
笑止千万大失礼、何もしないで微笑んで座ってろですって?
不愉快。怒るまでもないけど、私は静かに息を吸った。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時