夏夜の城下 ページ40
陽差しの強い夏模様の城下町。どこからか聞こえる音楽や人々の喧騒といった華やかな昼の営みの中、人々の視線を一身に集める人物がいた。
花屋の前でたたずむ少女は、雪のように白い指先を桜のように色づいた唇に当て眉をひそめていた。
身なりから商家の令嬢なり貴族なのだろうと何となく予想は付く。貴族ならば全部買えばいいものをそこまで熱心に悩んでいるのだろうと偏見と疑問を浮かべていると、彼女が一輪の花に手を伸ばした。
そのちょっとした所作でさえ女性的で、とても洗練された雰囲気を醸しだしている。綺麗な細い指は小さなお日様のような向日葵を一輪スッと持ち上げた。
整った鼻に近づけ香りを嗅ぐしぐさを見せると、それこそ花の咲くような笑顔を浮かべた。
そんなにいい香りだったのだろうか、あまりにも幸せそうなその表情に、思わず見つめていた周囲の人々は息をついた。
「素敵な花をありがとう」
彼女はその顔立ちに比較しても劣らないほど美しい、とても深く真の通った声を出す。耳に心地の良い、子守唄のような穏やかな声だった。
お代であろう硬貨を店員に手渡すと、向日葵を胸に抱えて歩き出そうとする。しかし彼女は足を止めた。周囲の視線が自分に集まっていることに気が付いたのだろう。
流石に失礼かと目線を外そうとしたとき、こちらに振り返った彼女がふわっとはにかんだんだ。
「それ絶対お前に対してじゃないだろ」
「ああ？ あのコぜってぇ俺のこと見てたからな」
「そんで？ お前は詩人にでも転職するつもりか？」
「まあまあ、だがこの話には続きがあってな？」
その少女が駆けていった先を見ると金髪の美青年がいたんだよ。
「十中八九彼氏だろ」
「それがさ、お忍び中のゼン殿下だったんだよ」
「まじか……」「馴染みの酒屋が言ってたからな、間違いない」
「……ということは殿下の婚約者か何かってことか？」
「ところがどっこい、横に並んだ二人を見てみんなびっくりしてたよ。そっくりすぎてな！」
白銀の髪に淡い蒼の瞳。横に並ぶ殿下をそのまま淡くしたような風貌の美しい少女だった。
「もしかしてそれ……冬頃こっちに帰って来たA王女？」
「そうなんだよ！！ ここまで言って気づかなかったか？！ 町の皆ずっと噂してるぜ」
こうして、クラリネスの夜は更けていく＿＿＿＿。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
