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31時間後安定。 ページ35

「君がA殿下と親しくしていることで話があって」


その言葉に嫌な汗が流れる。

王族であるAにたかが薬剤師のお前が近づくなと暗に言われてしまうのか。


「ありがとう」

「え……」

「A殿下の心の支えになってくれてありがとう」


子を見守る親のようだと思った。
その視線は俺が受け止めようとしていたものとはかけ離れた、優しく、温かいものだった。

こんなにも、Aのことを想っている人物がいる。

自分のことのように思ってしまうのは高慢かもしれないけど。


「あの方には同い年の、君みたいに心を開けるような人がほかにいないんだ」


Aの年相応な無邪気さをおれは知ってる。
でもそれは彼女の奥底の一部でしかない。

凛としていて、気高くて、模範的な姿。

Aはずっとそれに沿った振る舞いをしている。


「ゼン殿下やイザナ殿下たちとは年も離れているうえに今の今まで離れて暮らしてきた」


Aから友人の類の話は聞かない。

もしおれと別れた後から今の今まで彼女の世界に大人しかいなかったとしたら。
もしAの年相応な振る舞いがが小さな箱庭に閉じ込められたままだったら。


「A王女は気をほぐす場所がなかったんだよ。だから、そんなあの方のよりどころになってくれた君に感謝を」


それだけだよ、そう言ってガレスさんは大扉の向こうに消えていった。

その大きな背中を見て、俺は思った。

おれは、彼女の支えになれているのかと。

昔からそうだ、Aに引っ張ってもらうばかりでおれ自身は何もしてない。

人づきあいもよく解らない。
正しいか間違っているのかさえ判らない。

おれは、なんでか人のことが良くわからない。

こんな未完成なおれでもAのことを本当に支えられるのか。
支えようとする考えがそもそもだめなのか。

それでも、Aの一番の味方であるガレスさんにああ言われたからか、不思議と大丈夫な気がした。


もうそろそろ経過観察の時間だ。

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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