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夕食時、私はガレスと社交界の話をしていた。
「私と同い年の貴族はあと三年で社交界入りか……」
この国で夜会や舞踏会への出席を始めるのは十五歳から。
私は王女ということもあり顔を出すことはほぼ必ずだけれど、私と同い年の人はまずいない。
「私は姫の護衛もあり今はあまり出席していませんが、夜会にいい思い出はあまり……」
近衛騎士団所属で将来有望、あの薬室長に似た美しい顔立ちと来たら、そこらの令嬢が放っておかないでしょうね。
少し眉をひそめるガレスが不憫で面白い。
ガレスのことを笑って食後のお茶を飲んでいると、扉を叩く音が響いた。
「どうぞ」
「失礼致します」
宮廷の制服に身を包んだ側仕えの伝令係がお辞儀をし銀のトレイを差し出した。
上には半分に折りたたまれた紙と一輪の花が乗せてある。
花の色を反射する真っ白な紙には見慣れたサイン。
「ドレスの仕立て人ね」
大方、その一輪の花で察していた。
この城に来る前から専属だったこのドレスの仕立て人は、必ず赤薔薇を一輪よこすのだ。
明日のお茶の時間は、私専用の謁見室改め姫百合の間で、馴染みの仕立て人とお茶をしながら春の茶会用ドレスの準備。
伝令役を下がらせると、私はその花を花瓶に生けとくように控えの女中に命じ、その日を終えた。
次の日の昼下がり、姫百合の間にて。
私は扉の両側にいる兵に軽く声をかけ、青い細工が彫られた大きな白い扉を両側から開けさせた。
雫の滴る百合のようなシャンデリア、足音を吸収する金糸の刺繍入りの絨毯。
私が広間に入ると、馴染みの仕立て人が立ち上がり厳かに礼をする。
「姫様、久方ぶりでございます」
「ごきげんよう。あなたにとってはたった四週間でも半年ぶんはあるらしいわね」
私がそう笑いながら冗談めかすと、亜麻色の髪を赤いリボンで肩に垂らした仕立て人もふふ、と笑った。
「もー、四週間なんてあたしにとっては四年くらいだわ!」
最後に会ったのはひと月前にドレスを作らせた時だった。
この人は、私の昔馴染みとも言える仲だ。
彼女は私お抱えの仕立て人で、北の城にいた頃から朝起きてから寝るまでの服までもを作って貰っていた。
「春の茶会用のドレス、数着仕立ててきたから着てみてね」
仕立て人が手もとの鐘を鳴らすと、鮮やかなドレスを持った彼女の使い達が入ってくる。
「ではA様、こちらへ」
あれよという間に私は広間の控え室に連れていかれた。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時