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一人になった私は、些細に見えた傷が思ったよりも深かったことに呆れつつ、渡された布をとにかく強く押しあててた。

傷口がじくじくと痛み、布が赤く染まっていく。

決して危険なほど多い出血量ではないのに、その赤を見つめていると目眩がするような気がして、私は目を閉じた。

__彼じゃなかった。これと言ってなんの反応もなかった。

失望に似た感情が渦巻く。
勝手に期待して勝手に落胆するなんて失礼なものだ。

異様に静かな部屋にいるせいか、刺すような鋭い耳鳴りが襲う。

心細くてたまらない。私がこちらの城に来てから楽しみにしていたことが潰えてしまった。
そもそも本当に友人なんていたのかしら、そんな情けない言葉が思わずこぼれそうになる。

肩が震え、椅子の上で縮こまると、白銀の髪が明るい日差しに照らされ私の視界が虹色に染まる。
口から漏れ出た息は震えていた。
背後から、暗闇が傷口を抉りに来る錯覚すら襲う。

赤は嫌いだ、”あの時”のことを思い出しそうになる。
フラッシュバックする赤黒い光景。

「____っ」

誰に聞こえるでもない、ただの小さな独り言。
独り言なのに、誰かに届いて欲しいと願う身勝手さ。

布を押さえる指先はじっとりと湿り、氷のように冷たく、震えている。
金縛りに合ったような緊張感。
耳を切り裂くような静寂。小さな足音だけが、その世界にはあった。

声にならない助けが口をついた時。
僅かな風を伴いドアが開く。

見えない何かがまさに今迎えに来たのかと思い、そんなことないと解っているはずなのに思わず固まる。
トラウマを刺激された私の今の真っ白な思考ではまともな判断が出来なかった。

恐る恐る身構え後ろを振り向く。
そこにいる何かに怯えるようにゆっくりと。

「……お待たせしました」

するとそこに、深い緑の双眸を見開いた薬剤師の少年が、戸惑い、立っていた。
見られた、見てしまった。
お互いに凍ったように見つめ合っていると、彼の方が先に口を開く。

「そ、そんなに痛いんですか……?」

自分を心配する気持ちと声をかけにくいという緊張が垣間見える。
どちらにせよ、痛みに思考が引っ張られまともな判断や理解ができない私には、考える暇もなかった。

「……お見苦しいところをお見せしました」

それきりなにも言えずに、赤くなるのも構わず目元を擦り涙を拭う。
肌が熱を持つのがわかるが、誤魔化すように続ける。感情をあまり表に出すなと、私の幼い頃からの教育が訴えた。

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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