琥珀の画 ページ1
____と話してるとね、どうしようもなく幸せな気分になって、わくわくするの。
子供の時の優しい思い出。
白銀の世界の中に埋もれる、琥珀色のあかりに照らされる星のような、温もりに香り立つ花園。
彼の腕を引っ張ってある一角に連れて行き、そこにある水彩で描いたような葉っぱを一枚だけ拝借した。
「同じ色でしょ!」
「よく見つけたね……でもそれ、毒あるよ」
「知ってる」
「じゃあなんで」
「洗えば平気だって」
「王女様なんだからもっとしっかりしないと……」
「……わたしはAだもん」
少年は花緑青の瞳を困惑の色に染め上げる。少女はそんなことお構い無しに頬をふくらませていた。
周りの人はいつも、私のことを王女なんだからと嗜めていた。
それが嫌で嫌でたまらなかった。私を見て欲しかった。Aという名の年相応の我儘な少女のことを、見て欲しかった。
「わたし、ずっと____と遊んでいたいよ」
「A……じゃあ俺と約束、Aがもっと稽古とか作法とか頑張ったら、俺とずっと遊んでいていいよ」
その幸せな
花が咲いたように笑って、頬を
雨粒を落としたように揺らめいて、最後にはまっさらなキャンバスへと戻った。
***
鳥のさえずる音。
「ん……」
光を反射してシーツに流れ落ちる、水のような白銀の髪。赤みの一切ない、金髪とは違ったこの色は、兄達とはズレた色彩。
私はA・ウィスタリア・クラリネス、この国の第一王女。
久々に懐かしい夢を見た。昔の友人との記憶。顔は色彩くらいで、声も覚えていない、けれど大切だったことにかわりはない唯一の友人。
クラリネス王国の王女として生まれ北部の城で育った私は、つい最近この城にやってきた。王国の都に位置する、ウィスタル城。
北では見られなかった鮮やかな赤屋根の美しい港町。透き通った海。暖かい風。
そのどれもが新鮮で美しい。
環境が変わって大変という気持ちもあったけれど、それ以前に私には会いたくてたまらない人がここにいた。
未だ琥珀の思い出の中にいる、友人に。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時