検索窓
今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:42,605 hit

琥珀の画 ページ1

____と話してるとね、どうしようもなく幸せな気分になって、わくわくするの。

子供の時の優しい思い出。

白銀の世界の中に埋もれる、琥珀色のあかりに照らされる星のような、温もりに香り立つ花園。

少女(わたし)の横には、同じ背丈の大人しそうな少年。親に連れられてよくここに来ているらしい。私の大好きなお友達。

彼の腕を引っ張ってある一角に連れて行き、そこにある水彩で描いたような葉っぱを一枚だけ拝借した。花緑青(はなろくしょう)を摘み取って、少年の瞳をのぞき込む。


「同じ色でしょ!」

「よく見つけたね……でもそれ、毒あるよ」

「知ってる」

「じゃあなんで」

「洗えば平気だって」

「王女様なんだからもっとしっかりしないと……」

「……わたしはAだもん」


少年は花緑青の瞳を困惑の色に染め上げる。少女はそんなことお構い無しに頬をふくらませていた。

周りの人はいつも、私のことを王女なんだからと嗜めていた。

それが嫌で嫌でたまらなかった。私を見て欲しかった。Aという名の年相応の我儘な少女のことを、見て欲しかった。


「わたし、ずっと____と遊んでいたいよ」

「A……じゃあ俺と約束、Aがもっと稽古とか作法とか頑張ったら、俺とずっと遊んでいていいよ」

その幸せな過去(ものがたり)を、額縁越しに私は見ていた。

花が咲いたように笑って、頬を苹果(りんご)色に染め上げる白銀の少女を最後に水彩の世界はどんどんと滲んでいく。
雨粒を落としたように揺らめいて、最後にはまっさらなキャンバスへと戻った。


***

鳥のさえずる音。

「ん……」

光を反射してシーツに流れ落ちる、水のような白銀の髪。赤みの一切ない、金髪とは違ったこの色は、兄達とはズレた色彩。

私はA・ウィスタリア・クラリネス、この国の第一王女。

久々に懐かしい夢を見た。昔の友人との記憶。顔は色彩くらいで、声も覚えていない、けれど大切だったことにかわりはない唯一の友人。

クラリネス王国の王女として生まれ北部の城で育った私は、つい最近この城にやってきた。王国の都に位置する、ウィスタル城。

北では見られなかった鮮やかな赤屋根の美しい港町。透き通った海。暖かい風。

そのどれもが新鮮で美しい。
環境が変わって大変という気持ちもあったけれど、それ以前に私には会いたくてたまらない人がここにいた。

未だ琥珀の思い出の中にいる、友人に。

緑青と回章→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
81人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。