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閑話-紫水晶の弟- ページ15

銀刺繍の夜空色のシーツに広がる白銀を見て、年若い青年は落ち着かない様子で座っていた。

彼はガレス・ガゼルトよばれる男である。

半日前、毒を盛られた王女が薬草畑で倒れ、側近であるガレスは薬剤師のリュウと共に自体の収束に当たった。
城の者総出で王女を介抱し、いまだに苦しげに身をよじる彼女を先程からずっと見守っていた。

Aの側役になったのはほんの二年前。元々彼女についていた父が近衛兵団を退役したことから、ガレスが代わりに彼女に仕えることになった。

+++++

唐突に王女の教師を務めることになった姉が、家に帰る度に彼女のことを褒め称える。妹ができたようだとも言っていた。

そんな話を聞きつつ彼女に初めて会った時、まだ十歳ほどの社交界入りもしていない少女は想像よりも完成された姿をしていた。
手本のような完璧な淑女の礼で自分を出迎え、同い年かと錯覚するような知的な話題を振る姿。

深い青一色のドレスを着た、絵画から出てきたような少女がそこにはいた。

国のために新しい事業を企業したり、公務を行ったり。歴史、語学、算術、音楽の勉強。全てを王女として恥ずかしくないように、を口癖に片付けていた。

か細いからだに自分とは比にならない重責を背負っているのは直ぐにわかった。
それでも気丈に振る舞い、笑顔を絶やさなかった。

そんな時、突然倒れたことがあった。日々の精神的な疲れから熱を出してしまったと診断され、休んだ方がいいと言われた時、彼女は言ったのだ。

「私の健康管理が駄目だっただけよ……。私がやらなくて誰がやるの、代わりはいないのよ」

そばに居るからこそ、あの言葉が重かった。だから、俺が支えなくてはと思ったのに。
俺が至らないばっかりに、また彼女に苦労をかけてしまった。

「__レ……」

ふと、小さなかすれ声で名前が呼ばれる。はっと顔を上げると、目の前には苦悶の表情を浮かべた少女がぼんやりと目を開けていた。

薬剤師は丁度席を外していてここにいない。どうしたものかと一人で慌てふためいていると、囁きが聞こえた。その言葉に思わず固まる。

「っ……それは、こちらのセリフですよ」

爪が手のひらに食い込む。
迷惑をかけたわね、途切れ途切れの姫からの謝罪は、酷く心に染みた。

身上調査書-側近-→←閑話-紫水晶の姉-



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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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