じゅーに ページ12
ふと差した、
Aの瞳に浮かぶ影。
焦凍は言葉にできないぞわぞわしたものが、
全身を駆けめぐるように感じた。
今まで明るかった彼女の、
見たことがない姿。
言葉に、詰まった。
しかしAは、
その影を一瞬で消し去ると、
また、いつものように笑った。
違和感。
そんな難しい感情を、
彼らが知っているはずもなく、
気のせいだと、焦凍も、冬美も、目を背けた。
『そーだ!!
焼き芋!!焼き芋つくろうよ!!』
「「え?」」
そして、
あまりにも突拍子のない提案に、
轟兄弟が、見事にハモる。
『落ち葉はいっぱい落ちてるしー、
サツマイモなら私が出せるしー、
燃やすのはしょーとくんができるでしょー?
あ、冬美ねぇは応援ね!!』
「まぁ、....作れないこともないけど....。
危なくないかなぁ...？」
冬美がもっともな意見を出す。
焦凍も大方同じ意見だった。
おまけに、
紙袋の中には、まだ数個
焼き芋が残っていた。
2対1と、完璧に不利になったAは、
むぅっと頬を膨らませたが、
まぁ、納得はしたらしい、
渋々、といった感じで小石を蹴った。
『よーし!!
じゃあ、ヒーローごっこだ!!
いくぜ!!おーるまいとくらっしゃー!!!』
「わっ!!」
そして、いつぞやのように、
唐突にバトルが始まった。
今回のは、個性をがっつり使ったガチバトルだが。
ちなみにAは、
焦凍に勝ったことが、一度もない。
Aの個性は植物を生やすだけ。
だから、炎を扱う焦凍とは、
相性が最悪だった。
それでも、Aは、あきらめない。
何回も、何回も、ぶつかって、倒れる。
それも、笑いながら。
縁側で冬美が呆れたように笑っている。
違和感。
その正体を知るのは、もうちょっと先。
焦凍は、無邪気にはしゃぐAが、
気になってしょうがなかった。
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作者名：雪兎 | 作成日時：2017年7月1日 20時
