【僕のヒーローアカデミア】君と私と約束を【轟焦凍】 (ページ11)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:24,495 hit

じゅーいちページ11

素朴なサツマイモの甘味。
しっとり、ほくほくとしたそれは、
二人の体をぽかぽかと温めていく。

『んまーっ!!』
「んっ。」

満足そうに、おいしそうに、
その小さい口の中に、サツマイモは吸い込まれていく。

二人ともあっけなく完食してしまった。
けれども、まだ袋にはサツマイモがたくさん。

どうしようか、
Aが眉をしかめた時。

「あれ、Aちゃん。来てたんだ。」

『冬美ねぇ!!』

学校の宿題らしきノートを抱えた冬美が、
タイミングよく、そこを通りかかった。

冬美は唯一、
この二人がこっそり庭で遊んでいることを知っている。

前に、二人で個性を使って
ヒーローごっこをしていた時、
たまたま冬美が通りかかったのだ。

当然、焦凍は焦った。
Aのことは誰にも言ってなかったし、
不法侵入してきたAのことを、
冬美が両親に言いつけるかも知れなかったからだ。

けれど。冬美は一言。

「その子、....焦凍のお友達?」

友達。
改めて言われると、むず痒い。
少し恥ずかしくなった焦凍が言いよどんでいると。

『そーなの!!
しょーとくんは友達!!私、A!!
おねーさんはだれー?』

Aが、あっさりと友達宣言をしたのだった。

そのあとも、まぁ、
主にAのせいでひと悶着あったが、
上手く収まり、冬美は、誰にも言わないと約束してくれた。

そこからAは冬美を慕い始め、
冬美ねぇ、と呼んでおり、
冬美も、妹ができたみたいだと
まんざらでもなさそうな笑みを浮かべていた。

それを受けて、
焦凍はちょっと悔しかったりもしたのだが。

とまぁ、その話は置いといて。

『冬美ねぇにもあげるね。』

Aは、紙袋の中から
焼き芋を一つ、取り出し冬美に渡す。

「わ、焼き芋?いいの？」

『うん!!』

冬美はAの隣に座り、
受け取った焼き芋を頬張る。
自然と、笑みがこぼれる。

おいしいものは、人を幸せにする力がある。

いつか、お母さんが言ってったっけ。
Aはなんだか寂しくなって、
ぎゅうっと、ワンピースの裾を握った。

「...?Aちゃん、どうしたの?」

その様子に気が付いた焦凍がAを呼ぶ。
少し潤んだAの瞳に、
友達の姿が見える。

「....ううん、何でもないよ。」

そう言って、
それだけ言って、

少女はまた、ほほ笑んだ。

.