九話 ページ10
___助けて___
そう呟くと、お姉ちゃんの周りに文字が浮き上がる。
これって、お姉ちゃんが個性を発動する時の…！
『…お姉ちゃん、やめて。だめです。だめ！』
お姉ちゃんの個性は、個性にした生物は死んでしまう。あの感じからして、自分に使おうとしている。
だめ、止まって。お願い。
強く願うと個性の暴走？が止まる。
お姉ちゃんの元は大急ぎで駆け寄る。足の痛みなんて、感じない。兎に角、止めなくてはならない。
お姉ちゃんが裏切ったと思ってたけど、手紙はくれていた。取りに行かなかったけど、何枚も地下への階段の前に置いてあった。
お姉ちゃんが死んだら私の生きがいがなくなる。
「私をこせ、いにして。この子に、ゲホッ…」
『要らない、だめ、お姉ちゃん。やめて！』
昨日と今日は涙が出る日だ。なぜか、涙が出る。
感情なんて、分からない。だけど、悲しい。
「私はも、無理だから…ね？個性になって、いっしょに、いる、よ？」
そういうと、お姉ちゃんの周りにあった文字がギュッといきなりお姉ちゃんを縛って光が出る。
眩しくて、目を思わず瞑ってしまう。すると、体に何かが流れてくる感じがした。
目を開けると、岩の下にいたお姉ちゃんはいなくなっていた。
お姉ちゃんが個性になったんだろう。
個性となった人は、召喚できるものの生きていた頃の記憶はなくなる。
つまり、私の姉だった記憶もなくなるというわけだ。
この個性でのお姉ちゃんはお姉ちゃんじゃない。
夜叉…夜叉だ。
すると、家の裏門から人の気配がする。
おそらくヒーローだろう。
ヒーローは嫌いだ。
ヒーロー気取りで、声すら聞いてくれない、ヴィランを必ずしも悪だと決めつけ、理由も聞かずに倒す。
そうだ。ヒーローの敵はヴィラン。
ヒーローが嫌いならヴィランになり、攻撃したら良い。そう思い、家に代々受け継がれてきた刀を日本とり、夜叉に持たせ、気配を消して家を出る。
さようなら。
よその家の屋根を飛びながら考えごとをする。もう、人間とは関わらない。すぐに暴力を振るってくるし、人間を人形扱いする。
トンッと近くの公園に飛び降りる。
刀を取るときに貰った、巫女装束に着替え、取っておいたお財布の中身を見る。
まぁまぁ、食事は三週間に一度で大丈夫だし水は適当にあるだろう。
路地裏で生活したら、誰も見にこないだろうし。
こんな感じで、私の家のない生活が始まった。
【彼女の姉】
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