･ ページ22
ブォー、と勢いのついた温風が水を纏った長い髪に吹き付けられる。
櫛で梳かれながら、手馴れた動作で髪を乾かされている私は、先程内心暴れ狂っていたはずなのだが今はどうしたことか、表情筋から発せられる言動まで緩みに緩み切っている。
｢……ふわー…｣
｢ゆるっゆるじゃないか……寝るなよ｣
｢寝ないってぇの……にしても上手いねぇ…｣
｢自分のもやるからな。まあ、御剣のが長いから少し大変だけどな｣
｢あー、そっか。風丸もそこそこ長いもんねぇ……なのにサラッサラだし毛先全然傷んでないし……｣
他愛のない話が緩やかな時に流れる。
思えばここに来てからというもの、こういった特に何の意味も持たないような、そんなありふれたような会話なんて数える程度しかしていないような気がする。
優しく髪を梳かれるのがあまりにも心地がよくて、本当にうっかり眠ってしまいそうだ。
それだと本末転倒なので、そろそろ、と本題に入ることにした。
｢野坂から電話でも来た？｣
｢やっぱりお前か、俺の番号教えたの｣
そう、昼間に野坂から尋ねられたのはたった一つ、風丸の電話番号だった。
あいつ、私に伝言させればよかったものを……
｢相手が相手だし、別に問題ないかと｣
｢別にいいんだけどな……少し涼しくなるぞ｣
風丸は会話を続行しながら手際よく作業を進めていると、途中一言断ると、今度は緩やかな冷風を送ってきた。
｢ふわ、涼しい……んで、野坂なんだって？私結局本題は聞いてないんだけど｣
｢……新しいタクティクスについて｣
｢タクティクス？野坂のタクティクスって事は、あれか、グリッドオメガか。｣
｢ああ、グリッドオメガという名前を伏せ、チームで新たな
グリッドオメガ。それは野坂が皇帝として君臨していた王帝月ノ宮が使っていたタクティクス。
まるで一本の竜巻の如く、敵を蹴散らしていくその様はまさに無双の暴風である。
｢……で、なんでそれを私に？｣
｢…俺の"あの技"を、俺の次に見ているのはお前だから｣
……そういうことか。野坂のやつ、世界相手でも容赦なく絶対王政を
要するに、あんなのが"何本も"フィールドを蹂躙する、野坂の狙いはそういう事だろう。
｢まぁ、チーム全員に、なら人手はいるか……｣
｢そういう事だ、ついでに髪乾かし代として｣
｢はいはい、わかりました｣
｢ほら、終わったぞ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フィル - こんにちは。 個人的なんですが、イナイレと鬼滅の刃やってほしいです。 (2019年11月13日 14時) (
レス) id: 0d12e6f332 (このIDを非表示/違反報告)
灰楯M - こんにちは。最新話拝見いたしました。風丸さんの固い決意が一語一句から感じとれます……。御剣さんも幸せになって……。 (2019年2月10日 10時) (レス) id: 554f9301e5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 野坂君尊いさん» 野坂君尊いさんはじめまして!!返信遅くなりまして大変申し訳ありません。誤字指摘ありがとうございます……!!確認したところ確かにそうでした……!!ご指摘感謝します、ありがとうございます!! (2019年2月9日 23時) (レス) id: a67af18030 (このIDを非表示/違反報告)
野坂君尊い - 初コメ失礼します！毎話楽しみに拝見させていただいています！質問なんですが、ページ34の新タクティクスのところ、"剛と柔"ではなく、"コードG"ではないですか？ これからも更新頑張って下さい！応援してます！ (2019年2月3日 16時) (レス) id: 5271d69b7b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 七瀬真昼さん» 七瀬真昼さん、いつもコメントありがとうございます!!そ、そうなんですか……?!ありがとうございます!!まだ見れてないんですよ〜…あっ、バレンタインすっかり失念してました……!!それですよね……公式のサプライズ、今年もあるといいですよね…… (2019年1月25日 20時) (レス) id: a67af18030 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき | 作成日時：2018年11月22日 19時
