28:ないものねだり ページ29
「つまんない人ですね。思ってたのよりずっと」
『……はい?』
後ろから声が聞こえたと思えばこれだ。ゆっくり振り返ると、背の高いメガネをした烏野の生徒が私を馬鹿にしているかのように笑っている。
烏野どんな教育してんだよ。今度会った時文句言ってやる。
「伊統さんって影山とかと同じ天才のくせに、全然違うって言うか?まだ影山の方が僕はいいかな〜って思いますね」
『別に君にそう思われても何の得もないんだけど』
「そういうところですよ」
すぐ自分のメリットを考える。
相変わらず笑ったままだが、どこか目は…目だけはここにいる皆と同じソレになっていた。
前見た時は私と同じなのかと思ったものだが。人はよく変わるな。最も、変わるべき私が全く変わっていないのが実に皮肉な話だ。
『何が言いたいのかな』
「黒尾さんに聞きました。それにわざわざ「俺が言っても聞き入れてくれないだろうから。そもそも口聞いてくんねーだろ」って。愛されてますね〜」
『嘘つけ。それにそれを言うなら君もじゃない?名前は知らないけど、そばかすの子。愛されてるって言うより尊敬?くそ笑えるね』
「勝手に尊敬されてるだけなんで」
『君の勝手な言い訳』
吐き捨ててその場を去ろうとした。
それが出来なかったのは前方に黒尾さんがいたからです。おい、俺じゃダメだ的なこと言ってたじゃん。
「やぁやぁAチャン。俺は引きずらないタイプだって知ってるだろ」
『っは、喧嘩してもその日に仲直りさせられましたからね。嫌ほど知ってますよ。詐欺師め』
「また随分とトゲのある言い方」
ひねくれてる私に付き合う黒尾さんも随分ひねくれてるもんだ。他人になんて構わなければいいのに、わざわざ……
黒尾さんを無視してそのまま通り過ぎようと足を進める。やはり、黒尾さんはそう簡単に通してくれない。腕を掴まれた。
なんなんだこの少女漫画のような展開は。嬉しかねぇぞ。東の及川さん連れて出直してください。
「IHのソロも決まってたっつーのに、どうしてお前はこうも……」
「才能あるのに何もしないなんて損ですよね〜」
『ははは。──お前ら私を見くびってんな』
こんな才能欲しくもなかった。普通に生きて、普通に、それなりに楽しい生活さえ出来ればそれで良かったのに。
また才能が邪魔をする。隣の芝生はとても青い。これは所謂ないものねだり。
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サラミ - つ…つづきを… (2022年11月3日 17時) (レス) @page34 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続キ求ム (2021年5月12日 23時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - ふぐひらめさん» それは「台本書き」というものでしっかりとした小説の特徴ではないですよー (2020年12月15日 21時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 宮侑だ…!好きですー! (2020年12月5日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
@穂実(プロフ) - 面白いです!がんばってください! (2020年10月12日 18時) (レス) id: 596dab791f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪翔 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel
作成日時:2020年7月21日 21時