うるせぇ、トランペットぶつけんぞ【宮侑】 (ページ25)

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「わっはっは！そりゃ災難だったなぁ！」

『この爺災難だけで済ませやがった……』

一通りの話をしてみるも、やはり祖父は当てにならない。だってこの人天才なんだもん。

1回聞いたものは耳コピで弾けるし、絶対音感を持っている。私とは違う、本物の天才。
もう引退間近なんだけどね。

「黒尾には世話になったからな。というか、本当にちゃんとやってんのか？」

『大マジだってば。1回寝坊しちゃったけど、その時もおばあちゃん助けたし』

「ふーん。黄色い声ってのは」

『か……かわりたくない相手がいたので…』

「阿呆かおまえ」

そんなんで黄色い声あげんな、と深いため息をつかれた。だって……

私は中学時代、なんにもやらないような奴だった。部活も、学校も、全部適当に済ませてめんどくさいものはやらない。嫌なものからは逃げる。それが普通で、高校でもそうするつもりだった。

けど、黒尾さんはそんな私を見てこう言った。

「ぶっは、相当グレてね？安心しろ伊統チャン、俺がお前を正してやるよ」

ぶん殴ってやろうかコイツって思ったがな。はっ。
それから半年程、黒尾さんに追いかけられる日々が始まった。くっそムカついたけど、黒尾さんがいたから私はちゃんとした人間であることが出来ると思う。

黒尾さんは卒業の時、ある約束をして高校に行った。

「そりゃまぁ、恋だな」

『黒尾さんとの約束は守ったのに！！あの下手くそめ！！』

「聞いてないし……
A。他人を下に見るな。自分より優れていないからって、馬鹿にするな。いつか絶対足を掬われる」

そんなの黒尾さんにも言われたよ。

でも私より出来る奴なんていないじゃん。私よりトランペット吹けるやつなんて、いないじゃん。

……今は吹けないけど。

「油断大敵、と何度も教えたろうが。全く、黒尾がいないとすぐグレる……

いっその事東京に戻ってくるか？音駒に入れ、稲荷崎でおまえが大切な人を作れたとは到底思えん」

『……は』

東京に…？転校？

つか今、さりげなく稲荷崎の連中馬鹿にした？

「黒尾にも話を通しておく。兵庫に戻ったら、荷造りでもしとけ」

『な……んで今言うの？中学卒業の時でも言えばよかったじゃん。なんで今なの！！？』

「じゃあ何か稲荷崎に残りたい理由でもあるのか」

宮侑と、稲荷崎男子バレー部と、吹奏楽部と、全国行くって。

決めてたのに。