うるせぇ、トランペットぶつけんぞ【宮侑】 (ページ24)

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23.あ、お久しぶりですページ24

「…あれ、Aじゃないの」

『あ、お久しぶりです』

なんだなんだと集まってきた選手達の中に一際目立つトサカヘッド。

何を隠そうこの人は中学時代の先輩なのだ。いい思い出はないけども、高校デビューして兵庫に行った私には関係ないけども。

たまに会うくらいで、そんな仲良かった訳じゃないけどね。

「ちゃんとトランペットやってんのか〜？お前なんでも投げる癖あるだろ？」

『失敬な』

「あれ中学時代にお前に弁当箱投げられた気が」

『あれ私覚えてないんで。部長練習再開しましょー！！！！ほら早く！！！！』

グイグイ部長の背中を押すと吹部の子が声を上げた。私たちに聞こえるような大きさで。

「あっは、だってあんた部活もろくにやってないもんね！寝坊で部活休み？しかも部活中に黄色い声をあげるとか、挙句の果てには侑くんのお婆さんを手に取るだなんて！

稲荷崎の恥やわ」

「…お前、"また"部活サボってんのか」

『…………まさか』

「俺はあの時、ちゃんとやれって言ったはずだぞ」

『やってますって』

「じゃああれはなんだよ、変わんねぇじゃねぇか！」

「ストップストップ！！止めや！！そこのイケメンくんも伊統から手離し、中学がなんだったかは知らんがウチの部員やねん。詳しくは練習終わった後にしてぇや」

勢いよく私の胸ぐらを掴みあげた黒尾さんに、部長が止めに入った。

視線が痛い。

黒尾さんは普段怒らない。だから黒尾さんの高校のバレー部、そして関係のある人は目を見開いているのが分かる。
悪かったね、こんな人で。こんなトランペットマスターて。こんな奴がソロになって。

その場にいたたまれなくなって体育館から弾かれたように飛び出した。多分私がいない方が練習しやすいだろう、あの人も。多分。保証はありません。怒られたらちゃんと戻ります。てかトランペット持ってきたんで音楽室で練習してますわ。

しかしいざ練習を始めてみると、どこかで必ず間違えてしまう。今までそんなこと無かったのに。ちゃんとやってきたのに。

……なんで？

『うっそだろ……トランペット吹けない伊統なんて、稲荷崎に必要ないじゃん。カムバック兵庫にいた私…』

「どんまい」

『なんでいんのおじーちゃん』

ひょっこり現れたのはここに来る元凶となったおじーちゃん。伊統明善(てるよし)72歳。

プロの音楽家である。