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幸「…ナヅ・ケタガーリ中将が言うには、海軍では海賊(悪)だと思わせられる色を用いてはいけない、黒だと大将殿の白さがさらに目立ってしまうためです。だとよ」
少し正気に戻った幸乃進が話を進める。
「…黒ダメなんだね」
幸「おう、ダメだ」
だったらもう夜兎でも良い気がしたが、決まってしまったのであれば仕方がない。
これから名前も顔も知らない人たちに白兎と呼ばれるのだと思うと不思議な気持ちになった。本名よりも多く呼ばれていくのかと。
自分の名前を呼んでくれた人はまだ両手で数えられる程度だからそう思うのかも知れないが。
幸「それより決め事なんてまだまだたくさんあるじゃねぇか？終わったことに目ェ向けてたら、終わるものも終わらねぇ…。どんな正義にするのかとか、どいつを引き入れるとか」
小言を言う相棒ほど面倒なものは無い。最近反抗期気味な雪兎は話を速く終わらせたい一心で喋る。
「…僕の正義は“誰もが平等な正義”、引き入れは基本的にしないつもり。前の大将が担当してたG５を受け持とうと思ってた」
幸「…語呂悪くねぇか？」
「うっさい」
幸「はっはー！やっぱ、アンタセンスねぇな！」
先程まで苦い顔をしていた幸乃進は急に困り顔で笑い出した。笑われて恥ずかしくなった雪兎は両腕に顔を少し埋める。
幸「でも、まぁ。良いんじゃねぇの。その正義もセンスも雪兎らしいじゃねぇか。いやぁ〜、純粋でいいね若いって」
「…何が？」
幸「オジサンになれば分かる」
ニヤニヤしながら書類を書く幸乃進。何だろう、何かが負けた気がする。何かは分からないけど。
「まだ３０(オジサン)じゃないでしょ？」
幸「２９も３０もそう変わらねぇよ。他人から言われるのは癪だけどな」
「…やーい、オジサン」
幸「うっさい」
雪兎は肩を震わせながら静かに笑う。昔から一緒にいるこの相棒との会話はいくらしても飽きない。いや、もう会話しなくても面白い。
幸「ったく、笑うんならもっと分かりやすく笑いやがれ」
「照れてる？」
幸「いや、呆れてる」
ドヤ顔でそう言った幸乃進を見て、何故かひどく楽しくなってしまい思いっきり笑った。
この会話は書類の進行度を確かめに来たモモンガによって中断される。
どうやら思ってた以上に時間は進んでいたようで、モモンガが終わっていない書類を見てため息を吐き遠い目をしていた。
ちょっと罪悪感湧いた。
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作者名：雪兎-yukito- | 作成日時：2021年4月13日 21時
