3話 ページ11
「バラティエ？」
幸「海上レストランバラティエ、海の上で食べる料理は上手いが従業員はクソ…おいおい、一応報告書だぞ？」
先程来たモモンガから追加で渡された東の海の報告書を見る２人。どこから持ってきたのか、丸椅子に座りキュルキュルと良い音を鳴らしながら回る雪兎。
「料理長は…ゼフ？この顔見たことある気がする…」
幸「 元クック海賊団船長のゼフだろ。元々そんな過激な奴(海賊)じゃあないし、今は足洗ってんだ。注意するこたぁねぇだろ」
ピタリと幸乃進の前で止まると彼の持っていた紙を手から抜き取る。
「じゃあなんでこれ(報告書)来たの？」
眉を顰め、顔の横でピラピラと紙を動かす雪兎は幸乃進に問う。幸乃進は呆れたような顔をして紙を奪い返した。
幸「人の話も書いてる内容もちゃんと最後まで見聞きするんだな。ほら、ここに書いてあるじゃねぇか。クリーク海賊団がバラティエを襲撃。うんたらかんたらなお営業に支障はないもよう、ってな」
幸乃進は紙に書いてある文字を適当に指でなぞる。
「なるほど、うんたらかんたら」
幸「…副料理長の男と新人の麦わら帽子を被った男が海賊団を倒すため共戦したんだと。勝ったのはコック」
雪兎に余計なところを復唱されたのにイラついたのか眉間にシワを寄せて言い直す。そんな彼の様子など気にせずキラキラした目で雪兎は紙を見つめた。
「へぇ、戦うコックさん！故郷思い出すね」
幸「バカ言うなよ。ウチのコックは焼くことしか能がねぇよ」
「塩あったじゃん」
幸「馬鹿野郎、どう頑張っても天と地ほどの差あるぜ」
幸乃進の言ったことは確かなので言い返せなくなってしまった雪兎。不貞腐れた様子で言葉を紡ぐ。
「…なんで報告書なんかくるのさ。海上レストランを海賊が狙うのは当たり前でしょ？」
幸乃進は頭を掻く。目が一瞬迷うように動く。
幸「新人がどうやら海賊だったらしくてな。問題起こして一日働かされてたんだと」
「海賊を働かすレストラン…」
幸「すげぇよな。でも、問題はまだある。なんで働かされた海賊がなんでコックじゃなく海賊を狙ったのか。海賊が理不尽な逆恨みをしねぇのが不思議だ」
「…」
雪兎は悩ましげに腕を組む。幸乃進はそんな彼の様子をジッと見つめた。
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作者名：雪兎-yukito- | 作成日時：2021年4月13日 21時
