そのレンズは何を捉える【怪異症候群】Ⅱ (ページ6)

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氷室｢その婆さんから神代家のルーツを教えて貰ったのか？｣

何となく答えが予想できるが、案の定再び大きなため息をつく加賀。

加賀｢…まあな。しかし、自分の子孫にも言わねえ歴史だ。というか、その婆さんもガキの頃にそのまた爺さんから聞かされてただけで、特に大それたことじゃないと思ってたらしい｣

それなら納得がいく。自分の家の古い歴史、増してや数百年も前に途絶えた歴史なら、尚更だ。そして、由佳の件も説明がつく。

｢…つまり、姫野さんが一連の怪異に巻き込まれるきっかけとなった最初の怪異があそこまで大きくなったのは、神代さんの血筋が原因…ですか…？｣

霧崎｢…お前もだぞ｣

雨音の頭を軽く手刀で叩き、霧崎が補足する。こほんと咳払いをして、加賀が話を続けた。

加賀｢…雨音が言ったことがほぼ正解だ。俺が言いたいのは………｣

氷室｢神代家には呪術師としての力があった。その末裔、神代由佳が『ひとりかくれんぼ』という名の呪術を施してしまった。そして、とてつもない怪異を呼び寄せてしまった。それが今回の怪異……『怪異症候群』の真相だ｣

加賀｢その通り！｣

簡単にまとめ、氷室が息をつく。部屋の中に重い雰囲気が漂った。もし、由佳が自分の家の歴史を知っていたら。もし、美琴があの場を訪れなかったら…そして、もし、雨音がこの件と『縁』を持たなければ。
『たら』と『れば』を挙げ始めればきりがない。だが、起きてしまったことは取り返しがつかないのだ。それがどうしてももどかしい。
しかし、まだ全てが解決したわけではない。

氷室｢…もう一つ、疑問が残る。どうして美琴くんと雨音はそれほど大きな怪異に対してほぼ何事も無く掻い潜ることができたんだ？｣

テーブル越しに氷室と目が合う。

｢…私が何故生きていられたのかは自分でもよく分かりませんが…姫野さんの方は何とか、説明がつきました｣

霧崎｢どうやらな…俺と雨音が調べたところによると、姫野美琴もまた、『呪術師』の家系だったらしい｣

話を引き継いだ霧崎の意外な一言に、氷室、そして加賀の目が大きく見開かれた。

加賀｢なんだと…！？｣

霧崎は目を伏せ、淡々と話し始める。

霧崎｢数百年前、筑紫地方に姫野という一族がいた。その一族は有能な呪術師として、古来より伝わる一族の秘法を代々受け継いでいた。だが呪術師と言っても一括りにはできん。主に祈願、疫病封じといった類らしい｣

雨音が静かに、その後を引き継いだ。