・ ページ5
「それで、その…話って？」
ようやくちゃんと告白して、ちゃんと付き合うことになるのかな、と期待した。
こんなに恋人っぽいのに、お互いもう好きだと分かりきっているからこそなあなあになってここまで来ていた。
今のままで充分と思っていたから、特に気にしていなかったけれど、友達には「それ危ないよ！」「ちゃんと言葉にして伝え合っておかないと、向こうはそんなつもりなかったーとか言い出すって」と釘を刺されていた。
じゃあ自分から何か言うべきか…？と考えていた矢先、世一くんから話がある、となれば、これは、もう、
「俺さ、日本フットボール連合ってとこに、強化指定選手として招集されたんだ……！」
「へ……？」
拍子抜けした顔というのはきっと、今の自分のこの顔のことを言うのだろう。
「詳細はまだわからないんだけど、とにかく今度会場に行くことになってて。日本フットボール連合ってことは、多分U-18とか関係してんのかなって勝手に思ってんだけどさ、何にせよ、今まで頑張ってきて良かったーって」
日本。強化指定選手。U-18。
ああダメだ。どれをとっても現実味がない。
でも。
「すごい……！」
でも、隣の世一くんはすっごくすっごく嬉しそうだ。
「世一くん、この前の試合で負けて全国逃したってすごく悔しがってたでしょ。私、世一くんが将来ノエル・ノアみたいなサッカー選手になりたいって知ってるから、すごく、あの、…嬉しい。応援したい！」
「へへ、ありがとう」
そうしてあっさり、お別れの日がきた。
と言っても、この日でお別れなんてこの時はまだ知らなかったのだけれど。
「頑張ってきてね」
二人で並んで帰り道を歩いていく。
「うん。めっちゃ頑張る。……何するかまだわかんないけど」
「知らされてないと不安じゃない？」
「不安っちゃ不安だけど……まあ、やるしかない！」
「世一くんらしいなあ…」
それから、どちらともなくしばらく黙ってしまった。
世一くんの自転車は相変わらずタイヤの回る音響かせて、私たちの隙間を埋めていた。
「……あのさ、俺」
立ち止まった世一くんの方を振り向く。
タイヤの音が止む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜 - いつも素敵なお話ありがとうございます！リクエストなんですが、糸師冴さんで男主くんの話を書いて欲しいです。暗い話で冴さんがヤンデレな感じで。注文が多いですがよろしくお願いします！ (8月6日 20時) (
レス) id: 539b005b10 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - 加糖雪さん» 素敵なお話ありがとうございます！！ (8月2日 12時) (レス) @page37 id: e7fc63ae3c (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - りりあさん» りりあ様こんにちは。リクエストいただいていた内容の作品を追加させていただきました！リクエストありがとうございました〜！ (8月2日 8時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» なんと！素敵な夢をみていらっしゃる…！リクエストありがとうございます。お待たせしてしまうかもしれませんが承りましたのでしばらくお待ちください…！ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» 返信遅くなってすみません！そうですね、束縛、独占欲の表現として三つ編みを用いていました(*˘︶˘*)ただ蘭世本人は無自覚かな？と思ったり思わなかったり…色々考えながら読んでいただけると嬉しいです^^ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星藍 海 | 作成日時：2023年7月19日 3時
