【ブルーロック】譲らない青 【短編集】

・ ページ40

けれども、目の前のこの子から悪気は感じないし、これ以上付き合うのに嫌な気も特にしない。



　言うなれば、そうだ。これはゲームのサイドストーリーだ。



　一位を獲れなかった両親から生まれ、サッカーで世界一になる期待と宿命を背負わされた主人公、氷織羊ことぼく。

　サッカー漬けを強いられた日々を過ごしていくそのつまらないメインストーリーから分岐して、添えられるように続くのはもうひとつの物語。それは箸休め。
　主人公がひょんなことから出会うのは、サイドストーリー限定のキャラクター。うん。人助けイベントだな。メインストーリーに直接は関係ないけれど、サッカーと趣味のゲーム以外をしている時の主人公を見ることができる。


　「お礼は…ぼくとこのファミレスで、また会ってくれへん？」

　カラスは一瞬面食らって、でも直ぐに笑った。
　
　「…もちろん」






　(…にしても、セロリが好きなの？、かあ…)

　羊は暗い帰路につきながら、ぼんやり考えていた。

　家ではいずれ世界一のサッカー選手になる羊の為に、栄養素を寸分の狂いなくきっちり調整して作られた晩ご飯が用意されている。
　だから羊がカラスと入ったファミレスで注文するのは、たいていサイドメニュー。その中でも特にサラダだ。

　別にこの男子高校生の食欲を持ってすれば、ファミレスで何を食べようが晩ご飯くらいぺろりと平らげられるだろう。
　さらに自分の為に完全食を作る親に隠れて、別のものを食べて帰るということに罪悪感があるわけでもない。


　でもなんとなく、サラダ。
　サイドストーリーでもそこは栄養面まで管理されたサッカー少年で一貫しておくか。みたいな…。理由は特にない。

　それがカラスに、羊を野菜好きに思わせてしまったのだろうか。
　だとしてもピンポイントでセロリなのは謎だが。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す