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黒髪の子の指先が俺の前髪に触れる。
あ、蘭世より指先細いな。
「髪の毛さらさらだあ」
「シャンプー何使ってるの?」
「三つ編み、黒名くんとお揃いだよね」
とかなんとか話しかけられているうちに三つ編みが完成し、最後は自分でピンで留めた。
画面を暗くしたスマホに自分の顔を反射させ、出来を確認する。蘭世のする三つ編みより線が細いけど、流石は女子と言うべきか綺麗に編まれている。
「ん、ありがとう」
「いえいえこちらこそ。触らせてくれて」
ありがとう、と言う声と「A〜!」と教室の入口から蘭世の声が響くのが重なった。
「おまたせおまたせ」
「あ。蘭世、おそい」
「ごめんごめん。先生と話し込んでた…って、その三つ編み、自分でやったの?」
「あ、わかる?この子がね、編んでくれたの」
「…へえ」
驚いたような、口元だけに笑みを張りつけた顔のまま、蘭世は黙った。
「蘭世?どうかした?」
「なんでもない、大丈夫大丈夫…」
俺に顔を見せないように俯いてしまう。先生となんかあったのかな。
とりあえず蘭世戻ってきたし帰るか、と立ち上がりかけたその時。
「そうだ。Aくんと蘭世くん、この後空いてるならさ、私たちと遊びに行かない?」
髪の短い子は笑った。結んでる子もそれに賛成しだす。
髪の長い子は「えっ、ちょっと…!」と何やら慌てているが、「迷惑じゃなければ…どうかな…?」と結局誘ってきた。
確かにこの後空いてるけど、蘭世は大丈夫だろうか。
「俺は別にどっちでもいいや。蘭世、どーする?」
「んー…俺、Aと用事あるから」
「へ?なんかあったっけ」
俺、さっき用事ないって言っちゃったんだけど。
「あるある。早く帰ろう」
腕を掴まれて、ぐいぐい力強く引っ張られる。
「…?!ちょっと蘭世、まってって」
慌ててスマホとイヤホンを掴み、机の脇のカバンを腕にかける。
椅子から立ち上がれば、蘭世は俺を引き摺った。掴まれた腕が痛い。
教室の外へ向かう途中で蘭世も自分の机の上に置いていたカバンに腕を通し、俺は振り向きがてら「ごめん、じゃあ」と何が何だか分からない、という顔をした3人組に一応挨拶だけした。いや、俺だって何が何だかわからない。
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夜 - いつも素敵なお話ありがとうございます!リクエストなんですが、糸師冴さんで男主くんの話を書いて欲しいです。暗い話で冴さんがヤンデレな感じで。注文が多いですがよろしくお願いします! (8月6日 20時) (レス) id: 539b005b10 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - 加糖雪さん» 素敵なお話ありがとうございます!! (8月2日 12時) (レス) @page37 id: e7fc63ae3c (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - りりあさん» りりあ様こんにちは。リクエストいただいていた内容の作品を追加させていただきました!リクエストありがとうございました〜! (8月2日 8時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» なんと!素敵な夢をみていらっしゃる…!リクエストありがとうございます。お待たせしてしまうかもしれませんが承りましたのでしばらくお待ちください…! (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» 返信遅くなってすみません!そうですね、束縛、独占欲の表現として三つ編みを用いていました(*˘︶˘*)ただ蘭世本人は無自覚かな?と思ったり思わなかったり…色々考えながら読んでいただけると嬉しいです^^ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2023年7月19日 3時