Ｌ ページ20
車の並ぶ広い駐車場。その真ん中。
「待てって！」
それでも先を行こうとするAの腕を掴む。冷たい。命がすーっと失われていっているように思えた。
「ああ…御影か…」
「おま、どうしたんだよ、傘は」
「大丈夫」
弱々しい返し。合わない目線。
絶対に大丈夫じゃない。
「あっちに車あるから、乗れよ」
「乗れない…」
「はあ？！」
「帰らなきゃ…」
うわ言のようにそう言えば、俺の手をふりほどいて歩き出そうとする。
「ちょっ……？！」
帰らなきゃって、どこに。
今度は離さないように肩を掴むと、身体が俺のほうに傾いた。
そのまま体重がかかって、2人でずるずると重力に従って地面に崩れていく。
水の張った地面に座り込む。名前を呼ぶが返事はない。
怖い。生きているか分からない。
血の気が引くのを感じて、焦って、襟を開けて首元に噛むみたいにキスをする。
雨に打たれる中、首元の感触で薄く目を開ける。
「れ…お…？」
「俺が、絶対、お前のことどこにも行かせねえから……！」
だ、め、と口を動かしたが、声が掠れて雨音にかき消された。御影にちゃんと聞こえたかどうかわからない。
御影は泣きそうな顔で首を横に振った。髪の先から飛沫が飛び散っている。
「…俺だけじゃねえ。凪も、國神も、千切も、サッカーやってるみんな、誰もそれを許さねえ……！」
……血の気が引いた。
嬉しい、と思う気持ちを上回って、怖くなった。
オレはもう帰してもらえない。絶対に帰らなきゃいけないのに。オレはどうしたってみんなを、コイツを傷つけてしまう。
「あぁ……」
オレがもっとはやく、気がつけていたら。浅い傷で済んだのに。
「ごめん、なあ…………」
力の入らない身体でそう声に出して、オレの意識はふっと途切れた。
強く抱きしめられてる感触が、意識の遠い所へ離れていく。
ぎゅ、とその手に力が篭もる。
「…帰してたまるかよ……」
雨足は弱まるところを知らない。
ポケットの中のスマホの鳴らす避難警報の音が、雨音にかき消されていく。
「異邦人」fin
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夜 - いつも素敵なお話ありがとうございます！リクエストなんですが、糸師冴さんで男主くんの話を書いて欲しいです。暗い話で冴さんがヤンデレな感じで。注文が多いですがよろしくお願いします！ (8月6日 20時) (
レス) id: 539b005b10 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - 加糖雪さん» 素敵なお話ありがとうございます！！ (8月2日 12時) (レス) @page37 id: e7fc63ae3c (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - りりあさん» りりあ様こんにちは。リクエストいただいていた内容の作品を追加させていただきました！リクエストありがとうございました〜！ (8月2日 8時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» なんと！素敵な夢をみていらっしゃる…！リクエストありがとうございます。お待たせしてしまうかもしれませんが承りましたのでしばらくお待ちください…！ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» 返信遅くなってすみません！そうですね、束縛、独占欲の表現として三つ編みを用いていました(*˘︶˘*)ただ蘭世本人は無自覚かな？と思ったり思わなかったり…色々考えながら読んでいただけると嬉しいです^^ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星藍 海 | 作成日時：2023年7月19日 3時
