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「ここ、いいかな?」
次の日、食堂で昼食をとっていると私の座っている席の机を挟んで向かい側から声をかけられた。
顔を上げると、好青年がご飯の乗ったお盆を持ってこちらを見ている。
浮かべているのは人好きしそうな笑顔だ。
私は一旦口に箸を運ぶのをやめ、
「…席、ここ以外にも沢山空いていますけど……」
今日は忍たまのみんなは授業があるらしく、私の保健委員会のお手伝いも授業が終わってから、ということになっていた。
そのため朝からすることが無く、のんびり過ごして昼食も早めに済ませてしまおうと忍たまの誰もいないうちに食堂を訪れていたという訳だ。
つまり、私が使っているこの入口に一番近い机以外は全部空いている。
それなのにこの見知らぬ青年は何故わざわざ私の席に…
(……いや、見覚えがある…)
私ははっと気がつくと箸を置いて立ち上がった。
「…すみません、気が付きませんでした。この前は助けていただきありがとうございました…!」
そして頭を下げると、戸惑った声が返ってきた。
「え、ああ、気にしないで。…よく私のことを覚えていたね?」
顔を上げて改めてその人の顔を見る。
優しげに笑うその人は、廊下で倒れかけた私を一度助けてくれた人だ。
「そりゃあ…助けていただいた方なので…」
「…どういたしまして、かな。改めてこの席、お邪魔してもいいかい」
かたん、とその机にお盆が置かれた。
私が答えずとも、彼はこの席につくつもりなのだ。
「え…っと、」
「おばちゃんのご飯は出来たてが美味しいんだ。このまま立ち話するより、食べながらにしよう」
言いながら、私の座っていたところの斜め向かいにすっと座ってしまった。
(私に話があるってこと…なのかな……)
私の隠していることに探りを入れられるのではないか、とつい疑ってしまうが、ここで断る方も不自然だろう。
単純に一年は組の子たちみたいに深い理由はないかもしれない。
(私の方も、この人がどういう人なのか少しでも知って安心したいし……)
私は同じ机でご飯を食べることへの了承を示すように、自分も先ほどまでのように椅子に腰を下ろした。
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時